Aさんを最初にティーチングしたのは去年の7月、典型的な右手打法、極端に言うと、右手一本で憎らしい親の敵のボールをブチノメシテいる感じ。
アイアンが全く当たらないと言って嘆いていたその時のAさんだったが、確かに酷い状態、全くと言って良いほど当たらない、兎に角フェースに当るボールが殆ど無い、わざとやってもあれだけトップ、シャンクを連続するのは俺にも出来ない、たまにフェイスに当たればとんでもない引っ掛け、それさえも10球に1回、殆どがシャンクかトップで前に飛んだら大拍手だ。 極端な右手スウィングだから軌道がばらばら、スウィングする度にクラブヘッドは違う軌道を通る、それと頭が暴れまくる、首振り人形だって勝てやしない、右に左に上に下にだ、全部動く、テイクバックで右に大きく動き、トップに行くに連れ上に上がる、ダウンに入ると今度は左に大きく動く、伸び上がった頭は下にも動く。 右手でスウィングするから左腕は全く死んでいる、左肘はインパクト時に大きく曲がり、腹きりショットの見本の様なスウィング。 しかしこの様な人は特に珍しい訳ではない、殆どのアマチュアは右手でボールをヒッパタキに行く、それを長い間一生懸命練習して身に着け、完全に自分のものとして癖にしてしまう。そしてどうしようも無くなってからティーチングに来る、 このパターンが一番多い、今まで色々な人に教わった事だろう、ゴルフの先輩、ゴルフでない年上の先輩、その辺の教え魔、ゴルフレッスン書、等などナド、良いか悪いか解らない内に色々教え込まれる。 スウィングではなく、いかにボールをぶっ飛ばすかを試行錯誤する、ある時『解った!!これがゴルフだ!!』っと何度も何度も思い、そして何度も何度も裏切られて来ている訳である、スウィングに限らず人に何かを『教える』っと言う事は、責任も生じるのだが、教える本人も解ってないから、ああして見ろ、今度はこうして見ろ、ヤッパリそうしたほうが良い、っと、ロボットにされてしまう。 それは仕方が無い、教えている方に知識など無く唯闇雲にまぐれ当たりを期待して、もし、1回でもまぐれで当たれば『ほら!なっ!俺の言った通りだろう!!』っと鼻を鳴らす、教えて貰っている方も、兎に角当たったのだから訳が解らなくても『成る程!!解りました!!有難う御座いました。』っと喜んで実は何が成る程かは全く解っていない。 間違って何回か連続で当たると『解った!!、これでやっとゴルフが解ったぞ!!』っとお礼に一杯であるが、明日に成ると、昨日の当たりがどこかへ消えてしまっている、これの繰り返しである、だからゴルフは楽しい。 しかし正式にティーチングを受けると、今まで楽しかったのが急に苦しみに変る、今まで自由にやっていたのが出来ない、偉そうなのが前に立って色々無理を言う、『右手を使っちゃ駄目、左腕主導でスウィングする事!!』『テヤンデー!、コッツラ長え間右利きで通して来てんデイ、今更急に左利きんなれったって、そう簡単に行くもんケー!!』 っと啖呵の一つも言いてえ所をぐっとこらえて、出来てるか出来てないかも解らないが兎に角言われたままやる。 しかし不思議な事に、我慢して・・・、ったって、心の中では『本当に上手くしてくれんだろうな〜!先生ヨオ!!』っと言いながらであるが、少しの間半信半疑でやっていると、今までに無い感触でボールが飛んで行くようになる、そこで初めて『金を払う価値を認める』訳である。Aさんの最大の欠点、『右手でぶん殴る』を直すのは簡単ではないと覚悟した。兎にも角にも取り合えずフェイスにボールが当らなければ話にならない。 手首を多く使い腕の力でスウィングしないように指導した、方法は左手でクラブの重さを感じてテイクバックをして貰う、そのまま重さを感じながら、Bさんと同じようにグリップエンドを真下に引く様なスウィングのドリルをして貰う、今までとは全く違う動きの為癖を出す所ではない、言われるままにする事が精一杯である、そうする事5分、ヘッド軌道が定まって来た、芯に当たる、しかしこのスウィングでどうして当たるのかは理解できないでいる。 説明を加える『今まで右腕で引っ叩いていたのを、左腕でクラブを振るスウィングに変えた、右腕は最初延びていて、テイクバックでたたまれ、又フォローで伸びるっと言う複雑な動きをする、それに変え左腕はアドレスからフォロスルーまで真っ直ぐのまま、左手でリードした方が狂いが少ない、だから左腕に意識を持って貰うためにテイクバックからフィニッシュまで左でクラブの重さを感じて振って貰った』何言ってんだか解らなくてもその内解るようになる。そんな具合にAさんのティーチングが始まり、3ヶ月に1回位、問題の右腕主導のスウィングが消える事がある。 その度に俺は言う『やっと出来る様に成った、良かった、これでグンと良く成りますよ、その感覚を大事にしましょう』その時はスコアーも良くなり、ゴルフが楽しくてしょうがなくなる、しかしいつも一ヶ月と持たない内に逆戻りする、左手主導の感覚が全く解らなくなる、今Aさんは4回目の挑戦をしている、何とも残念な事だが、あの素晴らしい感覚がある日突然!本当にある日突然その日を境に、どうして無くなってしまうのか、俺にもAさんにも解らない、そして今日・・・・。 今日も左肘の矯正である、左肘が曲がる原因は解っている、手を無理やり返そう返そうっとする思いから、インパクト時に左手首が硬くなり余計返らなくなっている(写真10)、今日もその点を指摘したが、はっきりとした自覚症状が無い為まだ解らないでいる。Aさんも左肘が曲がる事が最重要課題な事を良く理解している、これが直れば90は叩かなく成る事も知っている、だから真剣に取り組む、その他にも欠点は有るが、今は全てを捨ててまず左腕の矯正、そのために試行錯誤しながら、前の良い感覚を取り戻す為に必死である。 俺の今日の格言:左肘が曲がった分だけボールは曲がる。 |