Iさんの進歩を妨げているものは?
彼の名前を仮にIさんとする。
Iさんが始めてティーチングを受けに来てから既に1年を過ぎている。クラブを握った事も無い当時の彼はとても研究熱心でレッスンにも真剣に取り組んでいた、多い時で週3回、今まで平均すると月6回位のペースのティーチングである。

性格は真面目で素直なIさんである、月6回ならば極平均的なペースでそれなりにスムーズに上達していった、4ヶ月目を過ぎた頃からその後の進歩がパッタリ止まった、所謂病気に掛かったのである、それはある時突然に来る、今までなんでもなく打てていたものが急に当らなくなる病気、原因は自分からボールを打ちに行きだす為、スウィングが全く狂い全然当らなくなるのである。

空振りさえ珍しくない。誰もが1度は掛かる病気で何ていう事は無いのであるが、彼の性格が立ち直りの邪魔をした。謹厳実直そのものの彼は何球か当らなくなると、そのままそれが続き全く元に戻れないのである、何をティーチングしても、何をアドバイスしても、返事はするものの全く聞き入れなくなってしまい、自分の世界に入り込んでしまうのである。



彼の心の中は『当らない!当らない!何でだ?なんでだ?当れ!当たりよ戻れ!!』こればかりである。今まで作ってきたスウィングが急に消える分けがないのである、どうしても当てたいと言う気持ちがスウィングを忘れさせ、手だけでボールに当てに行く、なおさら当たらない、するとヤケに成って当てに行く、尚当たらなくなる、悪循環が続く、そしてその日は終わってしまい、気を落として帰る。
しかし彼の出来るスウィングは1つ、他に無い、悪い癖が有る訳ではなし、スウィングそのものが間違っている訳ではない、その証拠に、次のティーチングの時は平気で打てる場合が多い、元のスウィングに戻っているのである。

そしてしばらく打ってステップアップしようと新しいドリルに入るとたちまち病気が顔を出す。ボールが無い時のスウィングは良い、当り前だ、これしか知らないのである、しかしボールに向かうと手だけで打ちに行き、スウィングが全く出来ない、この繰り返しが何と6ケ月以上も続くのである、来る度にこれを繰り返し、全く進歩が止まってしまった。

何度も彼と話し合う、俺としては何とか進歩して欲しい、時間と金を使って一生懸命ティーチングを受けに来ている、たかがゴルフレッスン、と俺には割り切れない、どんな生徒と言えども真剣に話し合う、ティーチングも真剣にする、ティーチングとは生徒と指導者がお互い真剣にならなければ成り立たないと思っている。

たかがティーチングとはどうしても俺には思えない。ティーチングとは何かをなんとか理解して貰える様に何度も何度も何ヶ月も掛けて話し合った、彼がティーチングに来る度に話した。彼も俺の文字通り必死の説得で理解してくれてから又進歩し始めた。
今でもたまに悪い癖は出るが、直ぐに持ち直れる様になった。写真は今日のスウィング、今日のティーチングは全て復習、今まで何度も矯正した事がしばらくすると又消えてしまい元に戻ってしまう、珍しい事ではなく誰もがそうである、それがスウィング造り、今良くなったからと言って明日までそれが持つとは限らない、だから練習するのである。

アドレスでの注意2点、『グリップの位置が悪い、クラブを長く持ちすぎる』『アドレス時のフェイスをスクウェアーに構える、フェイスをシャット(ヒールよりトウ部分が飛球線方向出ていて少し閉じた感じに成っている、このまま打つと左に引っ掛けてしまう)に構えない』(写真@)、フォローで1点『フォローで左肘が早く外に引けて曲がってしまうのに注意する』(写真ABC)であった。



しかし彼は夢中になると全てをかなぐり捨てて当てに行く、この癖が出ない様に注意しながらのティーチングでかなり神経を使う。たった今注意した事まで全く無視してボールに向かい当てることのみに夢中になる、スウィングを強制している時にはプロと言えどもまともには当らなくなる、こんな事は当たり前の事で矯正しながらいいボールを打とう何て虫が良すぎるし出来るはずも無い、矯正が完了して初めて当たり

だすものなのである、その間はボールを打つことよりスウィングの強制に集中しなければならないのだが、彼にはそれは耐えられない事なのである。

兎に角当たっていなければ気がすまない、我慢が出来ない、彼自身も解っているのだろうが、実際はボールに当たらない事に妥協しない。俺が神経をすり減らすのはここである、何とか当てさせながら直していかなければ成らない、彼に悪い虫が起きたらもうレッスンにならない、俺は黙って見ているだけになってしまう。


こんな時生徒の心までコントロールできればもっと上手くティーチング出来るのにと思う。何とか彼の心の中と相談しながらティーチングを進めて行く、アドレスの注意する点は出来た、後はフォローでの左肘である、好いときが有るのだがその感じが掴めないでいる。 左肘を伸ばそうとすると、右ひじが伸びて余計左肘が曲がる、トップで伸びている肘をそのまま保つように指導している。

今日の俺の格言『スウィングとは、空振りの時はボールを意識して、ボールが有る時は空振りを意識してする事』