連載手記『エッペのケツ』騒動記二一
第三章 エ〜エ!ウッソだ〜!!フィリピン何処もかしこも疑念の渦
そ11 フォードへ乗り込む!! その12 フォードを追い詰めた・・・・が?

今日の新たな登場人物、人物をクリッで自己紹介をします。


その11 フォードへ乗り込む!!


私は以前こんな事を考えた事が有る、今こうやって体験記を書いているが、これは私の身の回りに実際に起った事件、ノン・フィクションである、もし小説の様にもっと自由にフィクションで書いたらさぞ面白いのが書き上がるんじゃなかろうか?っと。 そして構想を練ってみたが、何と今書いている体験事実より面白いのが思い浮かばない、私の想像力の無さか、はたまたフィリピンの実情が想像をも絶する事なのか、そのどちらかは解らないが、私にはこれ以上の才能はやっぱり持ち合わせていない事を悲しいかな再認識したに過ぎなかった。

エッペの3度目のケツ落ちが有った日の朝、このままフォードに直接行って話をしてもいいのだが、取り合えず私が直にフォードに電話して様子を覗う事にした。
こりゃあ何処の会社も同じだろうが、必ず最初に受付のネエチャンが受話器を取った瞬間に、決まり文句をメチャ早口で喋り出す、一言一句違わず自動的に言葉が出てくる、相手が聞いていようがいるまいが、ネエチャンに取ってそれはどっちでも構わない。

兎に角一通り話さないと落ち着かないのである、彼女らの最重要業務である、お客の事など構ってはいられない、ネエチャンの仁義を切っているのをこっちは終わるまで待って、その後、もし私が話し出さないと、妙な沈黙の数秒間が訪れるのが間が抜けてて面白い。 だからたまにわざと黙っている事が有る、双方何も言わないまま10秒も経つと電話はネエチャンが切ってしまう、ホントか?っと思う人が居たら、今度機会が有ったら、イヤ無くとも是非試して見ると面白い。

しかし今日はそんな事して遊んでる訳には行かない、こっちの用件を話して担当者を電話口に呼ぶ様伝える、実はこれから電話口に出る奴とこれを機会に5ヶ月間も付き合う事に成るとは、お釈迦様でもご存知あるまい。

私は何度も経験している、フィリピン人は自分の非を認める時は動かぬ証拠を付き付けられた時だけ、証拠が無ければ絶対に認める事はしない、例え証人が居ようと、認めさせるには物的証拠が必要、以前経験した、メイドの泥棒事件もハッキリした証拠が出るまでは犯行を全く認めなかった、その時は私が何とか証拠を掴んで白状させたが、今回はどうなる事かまだハッキリとフォードが非を認めるまでの証拠は無い、名前をサニーだと言った、ニッサンからの回し者ではなくフォードのサニーだそうである。

『貴方が私のエッペを担当したんですか?』
『左様で御座る』
『私のエッペのどこが悪いか、何処を修理して欲しいと私が言ったか、貴方はご存知ですか?』
『承知仕(つかまつ)って御座る』
『それでは、何処を直したんですか?』
『バケットを交換したので御座る』

何だ?コイツの喋り方は?高慢(こうまん)ちきな野郎だな、っと思いながら話を続けた。
『どうしてバケットを交換したんですか?』
『そなたが交換して欲しいとお望みで御座ったので、交換したので御座る』
『私はそんな事を言っていませんよ』
『作業指示書に書いて御座る』

この担当者、サニーと言う男、四角四面な言い方は良しとして、言葉がどこか突っ慳貪(つっけんどん)で気に入らない、紋切り口上的(もんきりこうじょうてき)な言い回しもカチンと来る、後で聞いた話だが彼は肩書きこそサービス・アドバイザーと成っているが、実際には苦情処理、クレーム処理の担当員だった。

電話では埒(らち)が明く気配が無い、これから行くと言って電話を切った。
『ドラ!エッペのケツ上げろ!これからフォードに乗り込む!、お前めえはスペゴンで俺のケツに付いて来い!』
『旦那!やるんですかい?ベランメエ?』
『まだそうとは決まってネエが、向こうの出方によっちゃあ、唸(うな)らなくちゃあなるめえナ』
『ヨッ!待ってましたッ、聞きてえネエ、旦那の啖呵(たんか)ッ!パンパンパ〜ンッて歯切れがいいや!、ネエッ、これだきゃあ誰にも負けネエや、ホカア兎も角』
『ッてやんでえ、まだ唸るッたあ決めちゃいねえヨ、相手の出方あ見てっからだ、それに何んでえ?"ホカア兎も角"てなあ?』

『何んすか?そりゃ?、んな事言いやせんよ!あっしゃあ!やだねえ旦那の耳ア、時々空耳だ、一回けえ見て貰った方がよかねえッすか?医者に』
『ドラ、て前めえのトボケも最近メッキリ磨(みが)きが掛かって来たじゃねえか、エエ!オイ!』
『やだね旦那、んなに褒(ほ)められちゃ気恥ずかしいや』
『天然ボケめ!オウ!エッペのケツあ上がった、行くぞ!』

ポート・ボニファシオのフォードへはビリアモルの横を通り、NAVYの横も通ってそのまま真っ直ぐ行けば此処から3〜40分で行ける、ここのフォードはアラバンほど大きくは無い、敷地もアラバンの半分位、4階建ての一階がショールームやオフィース、2階から上が工場に成っているのはアラバンと一緒だ。

しかし置いてある車の数が意外と少ない、アラバンは2百台は止めて有ったのが見えたが、ここは百台も無いが外からは見えないだけかも知れない。
オフィースに入ると右側に一ヶ月間の作業日程が書いてあるボード、日付毎にポケットが作られそこに伝票の様な物が入れられている、きっと各車のカルテみたいな物が入っているのであろう、受付の部屋は細長く入り口は4m奥行きが12〜3mも有ろう、左側にはデスクが4つ並んでいる左の壁は腰から上はガラス張りで向こう側のオフィースが見える。

私は一番入り口にいた受付のネエチャンと話て、サニーを呼んぶ様に頼み、それともう一人、私に電話をして来た男も一緒に呼んだ、待つ事10分程でサニーらしき男ともう一人、2人の男が工場の方からオフィースに入って来た。
受付のネエチャンと話して相手が日本人と解ってビックリしている様子が見えた、サニーとは全部タガログで話をしたからだ。

二人の格好でどっちがサニーか見当が付いた、一人はまだ二十歳代の若造である、サニーは年の頃35〜6、痩せていて垂れ目のくせに目だけがやけにギョロメである、色は黒い方で、顔は少し角ばっている、背は私とイッテコイ、フィリピン人には珍しく頭を七三に分けてアブラを塗りたくっていた、ユニフォームの帽子を被ってない。

若い方はこれもヤセギス、背は160位と小さい、奴の女みたいな目を見て一瞬バクラ(オカマ)かと思った、それに加えてどうでもいいが、アンバランスなブタ鼻だ、アラバンと同じユニフォームで帽子も同じであった、手には何か書類を持っている。

頭ごなしに怒鳴りつける訳にも行かない、っかと言って、さっきの慇懃無礼(いんぎんぶれい)な対応をして来たら絶対許さない、日本人と解った以上相手はナメて掛かって来るに決まっている、美味しそうな鴨(かも)が葱(ねぎ)と鍋(なべ)とウーリン(タガログで炭の事)持ってやって来た、奴らの頭の中は醤油と砂糖は何処に置いたか思い出そうとしているはずである。

食えるもんなら食ってみろイ!、そん所そこらに居る鴨と一緒にするッてえと痛てえ目見るぞオ!、
コッツラ鴨は鴨でも人食い鴨デイ!。

その12 フォードを追い詰めた・・・が・・・!


2人が私の側に来てテーブルに座った、最初にサニーが口を開いた、
『何のご用件で御座るか?』さっきと同じ調子で喋ってやがる、こいつらは何で私が此処に来たかまだ判っちゃ居ない、エッペのケツが又落ちた事はまだ誰にも一言も話してないからだ。

『サニーの旦那、お前めえさん一寸待っててクンナ、先にこっちのアンチャンに確かめてえ事が有んだ』
『OKで御座る』
『よう、アンチャン、お前めえさんだな、俺に2度電話くれたなあ?』
『いえ、直接私が電話をしたんじゃないんでゴジャルが、私が電話してくれるように受け付けに頼んだのでゴジャル』
『最初の電話で何んて伝えたか覚えてっかなあ?』

『ハイ、覚えているでゴジャル』
『何んてったか言ってみな、ここでも一回けえ』
『バケットに穴が開いていてエッペのケツが落ちると言ったでゴジャル』
『いい子だ!そうだったなア、良く覚えていてくれた、その穴の空いたバケットは確認したか?』
『いえ・・・確認はしなかったでゴジャルが・・・』
『確認してねえのか、・・・・サニーの旦那、お前めえさんはどうだ?確認したか?』

どうせ確認なんかしてやしない、してれば私が此処へ来る事も無いのである。
『いや〜、確認までは・・・、報告は受けたで御座る』
『何んでえ、確認もしてネエのか?・・・まあしょうがねえけど、随分といい加減だねえ?・・・エエ〜、サニーの旦那!』
『・・・・・』

『後でゆっくりその件は話そう、所でアンチャン、そんで昨日、も一回けえ電話くれたな?』
『ハイでゴジャル』
『そん時あ何んてった?』
『修理が完了したから、いつでも取りに来ても結構でゴジャルと言ったでゴジャル』
『お前めえ中々頭が良いじゃネエか、ナッ、若けえのにテエシタモンだ、ねえっ、サニーの旦那!テエシタモンだねえっ!このアンチャン』
『テエシタモンで御座る』

”ってやんでえ、べらぼう目え、後で泣かしてやっからナ!!”っと思ったがコイツがなかなかしぶとい奴だった。
『じゃッ、も一つだけアンチャンにゃあ聞いて、これでシマイだ、ナッ、だから正直に言ってくれよ!』
『解りましたでゴジャル』
『一寸その前めえに、そこに有る作業指示書っちゅうのを見せてくんねえかなあ?』
『これで御座るか?』

作業指示書を受け取り、それを一寸読んで確認してから(この辺の会話はライブと思って構わない、よ〜く覚えているから・・・)

『エッペを修理した後、勿論テストぁしたなあ?』
『勿論したでゴジャル』
『誰が?』
『エッ?・・・・だれ・・って・・その〜!・・・みんなで・・・したでゴジャッタ・・・ですね?サニーの旦那?』

”今更オタオタすんねえ、こっちゃあ全てお見通しよう!!”意表を突く質問をするのは大得意である。
『そうで御座る、みんなでテストしたで御座る』
『サニーの旦那ヨ!そんじゃ聞くが、アンタそのテストの結果はチャント見たんだろうネ?嘘言うんじゃネエゾ!』
”どうでえッ、見たとは言えねえだろう、見たっていちゃまずいし、見ねえとも言えねえ、さあッ、返答しろイ”
『エッ!結果?・・・・結果は・・・、アンチャン見たで御座ろう?』
『私は見ていないでゴジャルが、ケツが上がってるのは見たでゴジャル』

『オウッ!サニーの旦那!お前ねえさんも見てねえんだろ?こっちゃあお見通しだあナ、これからお前めえさんに10分間やる、その間にテストの事ヨック調べて来てくんねえかナア?』
『かッ、ッかしこまったで御座る』
『アンチャン!お前めえさんにはもう用無しだ、向けえへ行っていいぜ、アリガトよ』

私がここへエッペを始めて修理に持ってきた時、詳しく症状を言って作業指示書に書かせた、その時"エンジンを掛けるとエッペのケツは上がるが、一晩止めて置くとケツが落ちて来る、もう一度エンジンを掛けるとケツは元通りになる"っと詳しくタガログで説明してネエチャンが今ここに有る作業指示書に書いてあるのをさっき確かめた。

きっとバケットを交換した奴は作業指示書何て見てない、ただ交換しただけだ、勿論交換したてはケツが落ちてる、エンジンを掛けりゃケツが上がる、これをテストと言っているんだろうが。
一番大事な一晩置く事をしなかった、昨日バケットを交換して昨日納車した、作業指示書を見れば一晩寝かせなければテストした事に成らないのはわかる筈である。

サニーが帰ってきた、さっきとは別の、これも若いニイチャンをつれて来た。
『この者がバケットを交換したメカニコ(メカニック・マンをタガログでこう言う)で御座る、この者が皆の者と一緒にテストした、ケツは上がった、と申して御座る』
『そうかい、ニイチャンがバケット交換をしたんだな?』
『そうでゴジャ〜ル』
『いつバケット交換したんだ?』
『昨日の朝でゴジャ〜ル』

『そして昨日納車したんだな?』
『そうでゴジャ〜ル』
『ニイチャンに聞くが、その時・・・ってなあ・・・バケット交換した時だ!、作業指示書を見たか?』
見てなんかいないのは解っている、見れば明日まで待た無ければ結果が出ない事が書いて有るから、直ぐに電話何かするはずが無い。

『チャント見たでゴジャ〜ル』
『何んて書いて有った?』
『バケット交換ってチャント書いてあったでゴジャ〜ル』
『それっきゃ見なかったのか?』
『それっきゃ?・・・・って?・・・』

『故障の症状は確認しなかったのか?って聞いてるんだ』
『しましたでゴジャ〜ル、ケツが落ちるって書いて有りましたでゴジャ〜ル・・・・・』
『随分声が小さくなったネ〜、ヨウッ!作業指示書、も一回けえ、今読んでみな?』

作業指示書は全て英語で書かれている、私がネエチャンに説明したのはタガログだが、英語に直されていた、さっき読んだ時には殆ど正確にトランスレイトされていた、話すのはかなり苦手だ、何しろ英語の中にタガログが混ざって来て言葉にならない、しかい簡単な英語位なら読むだけなら私にもできた。

最初作業指示書をニイチャンが持って、サニーはそれを覗き込んでいたが、いつの間にかサニーが持って一人で読んでいた、顔の表情が険しく成って来たのがはっきり解る。

その時私は言った
『オウ!サニーの旦那!エッペのケツはまだ落ちるんだよ、治ってねエンだよ!、だからノコノコ又やって来たってこった!』
サニーが作業指示書を見ながら
『っと言う事は・・・』
『そう!、お前めえさんが修理箇所を間違ったってこった!』

その時のサニーは、コレは困ったっと言う顔を隠す余裕も無くなっていた、
『もう一度点検しますで御座る』
『あったぼうだあッ!サニーの旦那、言っとくが、俺を甘く見ちゃいけネエヨ!唯(ただ)のハポン(日本人の事)だと思ってやがっると、後で泣き見るぜ』
『解ったで御座る』

その日はエッペを置いて帰って来た、それから1週間経ち、2週間経っても連絡が無い、ドラに電話させた、満更(まんざら)知らない顔じゃないから話も通り易いはずだ、生憎(あいにく)サニーは不在だった。
連絡くれるよう事付けを言って又1週間経った、フォードに最初に修理に出してから既に1ヶ月をとっくに過ぎていた、ドラに又フォードへ電話入れさせてサニーを呼んだ、答えは前と同じ不在だった。

居留守を使ってやがる!。
逃げてんじゃあしょうがねえ、こりゃあ、又近え内フォードに行かなくちゃあ何んねえな!

続く・・・・。

約1年間にも渡り、私を悩み続けさせた車の故障、          フィリピン自動車修理工場のダマシやズルの実態を
その故障発見から修理完了までの長い道のりは、          全てさらけ出した貴重な実体験記録、涙と笑いで綴った
常に付きまとうフィリピンならではの大ジレンマと           一大悲喜劇 『エッペのケツ』騒動記 新連載開始しました。
戦い続けなければならない長く苦しいものでした。
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