連載手記『エッペのケツ』騒動記二五
第三章 エ〜エ!ウッソだ〜!!フィリピン何処もかしこも疑念の渦
その19 三つの宿題!! その20 トラモのオヤジ再び登場!そしてドラとの別れ。


今日の新しい登場人物、はいませんでした。

その19 三つの宿題!!

『今探したので御座るが、何処に仕舞ったか解らないので御座る、探しますので後日にして頂きたいで御座る』
『ようし解った、後日にしよう、これで宿題(でえ)は2つだ、それからもう一つだ、ポンプの事よ、さっきお前めえさんに話した通り、このポンプは去年の11月に取ッ替けえた、そして此処に入れたなあ3月だ、このポンプあ部品として買ったから、保証期間は6ヶ月だ、ってこたあ保証期間中に此処けえ入れたって訳だ、ここまで解るか?俺の話が?』
『解るで御座る』

『ヨシキタ!しかし今と成っちゃあ保証期間が過ぎちゃった、いってえ誰の責任だ?』
『・・責任?・・・そう言われても困るで御座る』
『そう言われるもこう言われるもネエヤ!お前めえさんとこで、縦(よ)しんばポンプが故障してたとしても、その時解りゃあ無料交換だったんだ、ナッ、いいか?今更ポンプが故障したから又新しいのを買ってくれ、っと言われてもだッ!、俺あ飲まねえから覚えとけ、解ったなッ!サニーの旦那!』
『・・・・・』

『返事はどしたいッ!、サニーさんヨッ』
『その件に付きましては、私では何とも即答出来ないで御座る』
『じゃあ、それも宿題(でえ)だ、こんで宿題(でえ)は3つだぞ、解ってんな?サニーの旦那?』
『解りましたで御座る』
『それからナ、一つだけ言っとくが、妙な小細工すんなよ、手前めえで手前めえの墓穴(ぼけつ)掘る事ん成るぜ、こらあ親切に言ってんだ、それからアンマリいつまでも埒(らち)が明かねえ様なら、弁護士来させるかんナ、俺もそんなに暇人じゃ無ねえんだ、解ったか?』
『解りましたで御座る』

この時はとっても気持ち良かった、言いたい事は残らず言った、まあ小学四年生のタガログだから通じたかどうかは解らないが、思っている事は全部言えた、その事には大満足で有った。いい気持に成ってスペゴンの所に行った時、鍵が無いのに気が付いた、有るわけ無い、ドラが持ってる、エッペの番をさせて置いたドラをそのまま忘れて来た、引き換えしてドラを呼んで、帰りのスペゴンの中・・・。

『どうでエ、ポンプは見たか?』
『旦那、ポンプは同じ様でしたぜ、それに誰もイタズラにゃあ来なかったッスヨ』
『そりゃあご苦労だったな』
『しかし随分長げえ事話し込んでやしたねえ、いってえどんな話してたんすか?』
『まあ、天気の話とか、景気の話とか色々だ』

『何んでい、あっしあ又、啖呵切ってベランメエかと思いやしたよ』
『何んでそう思った』
『だって旦那、フォードに来る途中、何にも喋らなかったじゃねえっすか、何んか考げえ込んでて、ああ言う時きゃやるんだよネ、旦那あ』
『そうだったかなあ?』
『ッんでい!とぼけちゃって!』
『違えよ、俺らもうぼけちゃってっから直ぐ忘れちゃうんだ、何んでも』

しかし自信が有ったのも、気持ち良かったのもその時だけ、それから日を追う毎に不安が高まり、例の良く当たる悪い予感がし始めてきた。

それからサニーが電話を寄越したのは2週間位経ってからであった。
先ず第一の宿題をクリアーした、悪い予感が又大当たりの答えであった、問題はヤッパリポンプに有ると結論を出してきた、フォードで同じポンプを準備してと交換したらケツオチは止まったと言う事で有った。

第2の宿題、バケットは既に処分しちゃったという事であった、それじゃ納得が出来ないと言うと、なぜもっと早く言ってくれなかったと詰められた、交換した悪い部品は要望が有れば返すが、無ければ処分する、要望が無かったので処分した。確かにこれは私の失敗であった。

第3の宿題はまだ結論が出ていないと言う。
サアッ、これからどうする?・・・・・・もうトラモのオヤジっきゃねえな!サニーの奴に出したポンプの保証問題はフォード次第である、その答えをいつまでも待っている訳には行かない、又フォードは承知しないかも知れない、その挙句又スッタモンダでやっぱり長引く事になる。

所詮(しょせん)ポンプ交換はトラモでやったんだから、満更関係ないとはあのオヤジも言わないだろうが、チョット敷居が高くなってしまった、なんで直ぐ持って来なかったっ、と言われるに決まっている。

次の日
『ドラ、トラモへ行くぞ!』
『こんだトラモかい?旦那も気が多いねえ、・・・・・アアッ、ワカッタ!解りやしたヨ!旦那!、昨日、やっぱドンパチやっちゃったんだ、フォードで、ネッ、そうでがしょ?、そんでフォードに出てってくれッって言われて、行くとこ無ねえもんだからトラモのオヤジさんとこに"助けてくれ〜"って泣き入れに行くんでヤンショ?』

『オオッ、スゲエな!ドラ、何んにもお前めえにゃあ隠しとけねえな?エエッ、全てお見通し、ってとこじゃねえか、てえしたもんだ』
『やっぱりネ、俺が旦那のそばに付いてりゃよかった、エッペの番しながら考げえたんすよ、やけ起こさなきゃいいなッって、旦那あ短気だからネエ』

『ってやんでえ、いつもけしかけんの手前めえじゃねえか!ほ〜れ啖呵(たんか)だ、ベランメエだッて、いつも喜んでんじゃネエか手前めえは!』

確かにドラの言うとおりである、出てってくれとは言われて無いが、啖呵も切っちゃったし、今日これからトラモに行くのも助けてくれって言うのと同じ様なもんである。

あのオヤジ、何んとかできるかなあ?

その20 トラモのオヤジ再び登場!そしてドラとの別れ。


『オウ!俺デイッ、元気かオヤジ』
『やあ、旦はん、久っさしぶりでんなあ、ご覧の通りだす、あては元気でんがな、貧乏暇なしやあ、病気何てえそんな贅沢(ぜいたく)なもん、しとられへんがなあ、旦はんこそどないだす?商売の方はもうかりまっか?』
『俺あマアマアだ、そうかいそりゃ良かった、元気がなによりだ』
『今日は何んだんねん、・・・・アレッ、エッペじゃおまへんなあ?どないかしはったんでっか?』
『実ア、今日はその事で来たんだ、話しょお聞いちくれ』

私はそこで、オヤジの所からエッペを出してから、2ヶ月ほどでケツが又落ちた事、今度は違う箇所の故障だろうと思い、ポート・ボニファシオのフォードに今年の3月修理に出して、バケットを交換したが、直ぐエッペのケツが落ちて、又フォードに逆戻りした事。
続けて、
最近まで故障箇所を点検したら、最終的にポンプが故障している事がはっきり解った事を出来るだけ正確に話した、そしてどうしようか迷ったが結局オヤジの所へ来るのが一番早いと思って今日来た。

『っと、こう言う訳だ、どうしたらいい?』
『んんん・・・そやなあ、・・・フォードはんがはっきりポンプっちゅうてんのやったら間違いおまへんやろナあ・・・・・宜しおまッ、わいがチェックしまひょッ、ポンプ持って来てくんなはれ、フォードはんから』
『見てくれるか?すまねえな、オヤジのとこへ直っつぐ持ってくりゃ良かったんだが、・・・・色々頼んじゃった後で、又違うととこの故障じゃ面倒掛けちゃうと思ったもんで・・・・』
『もう宜しおまんがナア、済んだこっちゃおまへんか?』

『ッで、いつ持って来たらいい?』
『いつでも結構だす、旦はんの都合のええ時でかましまへん』
『よし解った、そんじゃドラに持ってこさせるから、宜しく頼まあ』
最初からオヤジの所へ持って来れば良かった、っとお決まりのしても仕方が無い後悔をして、そう言えばオヤジの所では1ヶ月も掛からないで直した、チョット見くびってたなあ、っと反省もお決まり。

『ドラ、明日フォードへポンプ取りに行って来い、その前めえに俺がサニーに電話入れとく、解ったな?』
『やっぱりねッ』
『何んでエッ?、そのやっぱりねッ、てなあ?』
『アン時言ったんだ、あっしあ、トラモが順当だッって、やっぱりトラモに戻って来ちゃった、しかも大回りしてだ、そのやっぱりねッ、すよ』

『そうだなあ・・・考げえてみりゃあ、ドラ、こりゃあお前めえの言う通りだ、俺っちの賽(さい)の目は最近、どうも裏目裏目と出やがる、どしてなんだこりゃあ?』
『前めえにアッシが言ったじゃねえッスカ、エッペの祟(たた)りだッて、覚べえてやすか?』
『ああ!覚べえてるヨ、覚べえてるが、信じあしねえよ、俺ア』
『解ったッ!、エッペの祟りじゃなきゃ、賽(さい)の祟りだッ!、こんなら信じらア、ネッ、旦那?』
『冗談言うネエ、どっちも信じねえよ!』

次の日フォードのサニーを呼び出して、ポンプをこっちで修理して見るから、渡せる様に準備して置いてくれっと電話した、その了解を取ってから、ドラを呼んだ、
『ドラ、いつ行ってもいいぞ、フォードへ、ポンプ貰ってからその足で、トラモのオヤジんとけえ持ってけ、解ったか?』
『旦那、そりゃ解りやしたが、チョイトでえ事な話がアルンスが、よござんすか?』
いつに無く神妙(しんみょう)な顔つきのドラが静かな声でいった。

『何んデイ、改まっちゃって、どしたい、又ヘマでもやらかしたか?』
『いやあ、そのっく位れえのがいいかも知んねえ、実アオヤジに呼ばれてる』
『トラモのオヤジが何で、て前めえを呼ぶんだ?』
『トラモのオヤジじゃネエっすよ、俺のオヤジでさあ、ビサヤの』
『なんでい、そうかあ、ドラのオヤジか、そんで何んだって言うんだ?』

『具合えが良くねえんでさあ、身体の、前めえっから知ってたんすが、最近酷でえ状態だそうッス』
『そりゃあ心配ぺえだなあ、っでどうすんだ?』
『帰けえらなきゃいけねえ、ただ、もう戻って来らんねえと思っていやす』
『そうかあ、お前めえパガナイ(い兄弟で一番上の意味)だったもんなア、そんでいつ帰けえる、田舎へ』

『イヤ、俺の上に居るこたア、居るんだが姉貴だ、男かあ俺だけっすから、申し訳ねえが、旦那、代わりのドライバー探しておくんなさい、見つかりしでえ帰けえりやす』
『まあナッ、お前めえもてえ変だ、せっかく慣れて来たんだが、残念だなア、よしッ、解った、出来るだけ早く代わりのドライバーめっける!』
『どうもすまねえ、旦那』
『ッてやんでえ、こっちより、お前めえの事心配ぺえしろい!』
暦(こよみ)はもう8月も半ばに入っていた頃の事であった。

ドラがフォードからポンプを受け取り、そのままトラモへ預けた、そして2日後トラモのオヤジから電話が入った。
『旦はん、ポンプ壊れてまへんで、正常だす』
『おかしいな?フォードじゃポンプを取ッ替えるとケツおちゃあ止まると言ってた、どうする?俺にゃあ解んねえぞ、こう成ると?』
『こんなんどないだす?オーバーホールさせまひょか?』
『そんで、でえじょぶか?』
『そやかて、このポンプ悪いとこおまへんで?念の為言うやっちゃ、そやけど2,500ペソ程掛かりまっせ、そないでもええでっか?』
『じゃあ、そうして見ちくれ』

この話はこのエッペのケツ騒動記を書き始める一ヶ月半程前の話、 三日経ってトラモのオヤジからオーバーホールが終わったから明日でも取りに来てくれ、っと言う電話が入った。
新しいドライバーはまだ見付からない、ドラにポンプをフォードへ届けさせる、1週間は直ぐに経つ、土日フォードは休みだから、5日しかない、ちょっとタイミングが狂って、金曜日の5時過ぎると月曜日まで待たなければ成らない。

これ以上ドラを使い続ける訳には行かない、ドラの親父が危ないのに、仕事所では無いはず何んだがドラはその事を一言も言わない、しかし今までの様な軽口は言わなく成ってしまった。

見かねた私は
『ドラ、お前めえ明日帰けえれ、いつまでも居られるもんじゃねえ』
『でも代わりのドライバーが・・・』
『デエジョブだ、俺の運転はお前めえよりズット上だ、心配ぺえすんな、それより早く帰けえってやれ、親父の事だってあらア』

次の日ドラは田舎へ帰って行く事に成った。
フィリピン人との別れでこんなに熱い物が込み上げて来る経験は初めてであった、戻って来るのは無理だろうなあ、とは思っていたが、"俺は待ってる、いつでも戻って来いヨ!"っと言って三ヶ月分の給料と、往復の飛行機代を付けて渡してやった。

クシャクシャの顔をグチャグチャのクシャクシャにしたドラの泣き顔を始めて見た。

『エッペのケツ』騒動記、完結編に続く

約1年間にも渡り、私を悩み続けさせた車の故障、          フィリピン自動車修理工場のダマシやズルの実態を
その故障発見から修理完了までの長い道のりは、          全てさらけ出した貴重な実体験記録、涙と笑いで綴った
常に付きまとうフィリピンならではの大ジレンマと           一大悲喜劇 『エッペのケツ』騒動記 新連載開始しました。
戦い続けなければならない長く苦しいものでした。
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