連載手記『エッペのケツ』騒動記二四
第三章 エ〜エ!ウッソだ〜!!フィリピン何処もかしこも疑念の渦
その17 準備万端、細工は流々、仕上げを御覧じろ。 その18 ベランメエ!!

今日の新しい登場人物、人物をクリックで自己紹介します。

フィリピンに来ると何かとご厄介になるイミグレイション、今回はその周辺を写真に収めたのをご紹介します。写真クリックで拡大します




その17 準備万端、細工は流流、仕上げを御覧じろ。

前回フォードへ来た時は余りの自信の無さで、せっかくフォードの前まで来て乗り込むのを断念して尻尾(しっぽ)を丸めて帰った苦い思い出が蘇(よみがえ)った、しかし今回は違う。
フォードに向かう途中、『喧嘩は駄目だぞ!』っと自分自身に言い聞かせながらスペゴンの中で昨夜立てた作戦を頭で復唱して見た、ここで又ポンプ代を払わされたんじゃたまったもんでは無い、これじゃ追剥(おいはぎ)に有った様なもんだ、毟(むし)り取られてケツノケバも無くなっちゃう。

しかしもし今回フィリピン流部品交換の術を手を使ってきやがったら、絶対に許さない、事件にする覚悟が有った、今度こそチャント証拠がある、トラモのオヤジからポンプの伝票を貰ってある。
それにはシリアル番号も書いてある、今日はそれも持って来たし勿論ポンプの写真も抜かりなく持って来ている、交換してあればシリアルナンバーなど無くても色の付き具合でそれと解る。

ただ異国人工場と同様にポンプその物を壊(こわ)されてしまう様な手を使ってくると、シリアル番号は何の役にも立たなくなる、しかも保証期間を過ぎちゃっているのは残念な事だ。

が、 実はこれも切り返しの手を用意してある、工賃共メーカーでやった場合は1年の保証が付くが、部品だけ購入の場合は保証は半年である、今エッペに着いているポンプの保証は今年5月で切れている。 例えポンプが本当に故障だとしても、フォードに持ち込んだ時が3月だからその時ポンプの故障を発見出来れば保証期間内だった、しかも保証期間が切れるまで2ヶ月もあった、その間フォードにエッペは泊り込みで有った。
当たり前の事、これも責任はフォードに有ると主張する積りで有る。

まだ有る、以前トラモで直した時はリレースウィッチの故障でエッペケツは一晩寝ると下がってしまった、ポンプの故障では無かった訳である、今度も全く同じ症状である、っと言う事はポンプは働いている訳だ。
今もしエッペのケツが全く上がらなく成っていたとすればこれはポンプが故障と解るが、もしエンジンを掛けてエッペのケツが上がればこれはポンプの故障では無い筈である。

幾ら極悪フォードとは言え、今更エッペのケツが上がりません等と異国人工場の後を追うようなイカサマは出来ない、今度は証人が多過ぎるほど居る、これも主張する議題の一つとして考えてあった。
そしてまだ有る、実はバケットの件である、これは以前も話したが写真を撮って有る、前後左右上下、全ての位置から撮ってある、前から考えていた作戦で有るが、この写真が有るので余りバケット交換の事をしつこく言わなかった。

この作戦は取り替えた直後には使えない、フォードがバケットの事を忘れた頃に成って始めて効果が期待できる、その写真も今日は持ってきている。
私はこれだけの材料を揃えて自信を持ってフォードに乗り込んだ、準備万端(じゅんびばんたん)、細工は流々(りゅうりゅう)、仕上げを御覧(ごろう)じろって所だ。

『ドラ、これからフォードに乗り込む訳だが、お前めえに頼みが有る』
『ヘイ、なんしょ?』
『フォードに入へえったら、まずエッペの状態てえを見ろ』
『見たってしゃんねえでえ、エッペのケツア落ちてるってサニーが言ってんだ、今更見たって始まんねえと思うがねえ?』
『だまって良く聞け、考げえが有るんだよ!、それからだお前めえに頼みあ、エッペを見てから俺達ちゃ話に入へえる、イイカッ、ドラ、お前めえはエッペにそのまんまくっ付いてろ』

『解った!解りやしたよ!旦那、流石だねえ、何かいたずらされると危ぶねえっすからねえ、奴ら見てねえと何やらかすか解ったモンじゃネエ。ヘイ!ヨござんす、チャント見張っておりやす』
『なるほどね、そんでいつまで見張ってんだ?』
『そりゃ、旦那が帰えるまで』
『その後たあ誰が見張るんだ?』
『何言ってんすか?誰も居やしませんや』
『じゃ、俺っちが居る間だけ見張ってんのか?』
『そい事ん成りやスネ、でも何にも見ねえよりあましだ、ネッ、旦那?』

『解った、ジャッ、シッカリ見張ってろ、ドラ、いいか一つだけ頼みがある、その見張ってえる間ええだに、ポンプ見ちくれ、前めえと同じかどうかだ、いいか?』
『へい!んな事たあお安い御用だ』
『但しだ!、もしおかしなもん見ても何も言うなよ、後で俺に教えちくれ、そんでもって、後たあズ〜〜〜ット見張ってていいや』
『へイ、解りやした』
『しっかり見張れよ、天然ボケ!』

私がボンネットを開けて覗き込んだりすると、わざとらしい、ドラが見る分にはチットモおかしい事は無い、しかし私のエッペが何処に有るのか解らない、最初に車のとこへ案内させなきゃならない、ケツが間違いなく上がる事も確認したい。

ポンプが替わって居なければ疑いは異国人工場式、変わっていればフィリピン流部品交換を疑う。
フォードに着いてサニーを呼び出し、オフィースに入って来たサニーに
『サニーの旦那、最初に俺のエッペ見せてくんねえか?』
『かしこまって御座る』

トランシーバーで何か話してる、そしてサニーに付いて行くとエッペは屋内の駐車場に有った。
『ドラ!、エンジン掛けてみろ』エンジンを掛けて5分程待ってケツは上がった、ポンプが生きてる事を確認出来た。
『サニーの旦那、もういいや、中で話しよう』

これで前作業は終わった、いよいよ小学校4年生のタガログで熱弁を振るう時が来た。

フィリピンのイミグレイション続き




その18 ベランメエ!!


『サニーの旦那、今お前めえさんと一緒に見たネえ、エッペのケツが上がるトコ』
『見たで御座る』
『って事たあ、ポンプは故障して無いね?、違うか?』
『確かにポンプは動いて御座る、しかし・・・』
『何んでエ、しかしッてなあ?』
『他に故障箇所が見当らないので御座る』

『って事あ、まだポンプと決まっちゃあいねえのか?』
『いや!それ以外には考えられないので御座る』
『ホントにそうかア?・・・バケットはどう何んでエ、考げえられねえのか?』
『バケットは取り替えたばかりで御座るゆえ・・・』

『オウ!サニーの旦那よ!冗談言っちゃあいけねえよ!ポンプだって取ッ替けえたばっかりでえ!、此処けえエッペを入れたなあ、3月の鼻だ、ナッ、覚べえてるか?』
『覚えているで御座る』
『今エッペに着いてるポンプあなあ、ヨック聞けよッ、去年の11月に取ッ替けえたばっかりよ、って事たあ3ヶ月チョットしか経ってネエ時に此処けえ入れたんだ』

『それは知らなかったで御座る』
『ッんな事言ってもしゃあねえから言わなかった、いってえ今は何月だ7月も終わりん成らあ、ナッ、バケットを交換してッからもうソロ5ヶ月経つってこった』
『解り申した、バケットも点検いたすで御座る』

『サニーの旦那ヨ!エッペは前めえも全く同じ症状だった、最後に判った故障箇所はリレースウィッチだったよ、解るか?リレースウィッチ?』
『リレースウィッチ?ッ、で御座るか?・・・・誰か、メカニコのキートンを呼んで来て下され』
『何んでえそいつあ?』
『今comecome殿のエッペ担当者で御座る』

『こねえだのと代わったのか?』
『あの者は、部品交換要員でして、故障箇所をチェックする者は又違う者がおるで御座る』
暫らくして背の高い185cmは有ろうかと思うメカニコのキートンがオフィースに入って来た、サニーと何か話していたが、間もなく私の所へ来てサニーがキートンを私に紹介した。 年は30に成って無ねえだろう、利口そうな顔をしている、こいつなら話しに成りそうだと直感した。

『よう!キートンさんよ、お前めえさんリレースウィッチって知ってっか?』
『エアサスのリレースウィッチでゴジャりますか?』
『オオヨ!、知ってっか?』
『知ってるでゴジャリます』
『よしよしいい子だ、前めえに俺のエッペがそのリレースウィッチが故障して同んなじ状態てえに成った、チェックして見たか?』
『イヤ、まだしてないでゴジャリます』

『なんでえ、してねえのか?イッテエゼンテエこの5ヶ月間何やってたんだ?、お前めえさん達ちゃあ?・・・ヨウ!サニーの旦那、どう言う事っすかねえ?』
『イヤッ・・・その〜・・・最善は尽くしているんで御座るが・・・』
『まあ、終わった事たあしゃん無ねえや、ネエッ、サニーの旦那?』
『左様で御座る』

『これからどうするかが問題でえだ、ネエッ、サニーの旦那、そうだネエ?』
『左様で御座る』
『そんでもって、どうすんでい、これから、・・・ヨウッ、サニーの旦那?』
『もう一度、点検し直すで御座る、バケットもリレースウィッチもポンプも・・・・』
『よしッ、分かった!今度こそいい加減な事し無ねえでくれよッ、ヨウッ、キートンのニイチャンもだ!』

『分かりましたでゴジャリます』
『サニーの旦那、今出した一つ目の宿題(でえ)のほかに、実は後2つばかり話があんだ、いいかい?』
『何で御座るかな?』
『先ずはバケットの件だ、お前めえさんが故障箇所はポンプだって電話して来た時のこった、そん時俺が、バケットは故障してなかったんだろう、って聞くと、お前めえさんは、バケットも穴が開いて故障してた、って言ったな?覚えてっか?』

『確かにそう申したで御座る』
『そのバケット見せて貰おうか』
『エエッッ!!、バケット・・・で御座るか?』
『オオヨッ、俺あまだ故障したバケット見せて貰ってねえぜ』
『・・・しかし・・・今頃・・・』

『今頃だとオ〜、そりゃあ、こっちの言う台詞(せりふ)だあ、今頃まで掛かってなにしてやがッたんでいッ!いいから見せろッ、俺のバケットだ、見せるの当り前めえだろうが!』
『分かったで御座る、チョットお待ち下され』

サニーとキートンは工場の方へ出て行った、持って来れば私のバケットかどうかは写真で解る、持ってこなかったら、故障は認められないと突っ張る積りだった。
その時の私の考えはバケットはもう処分してしまって、フォードには無いのではないかと言う事が心配では有った、もしバケットが有って一穴ブスリっとやられて小さな穴を開けられてもこれはそんなに問題ではないと考えていた。

その時はもう一回エッペに着けて上がるかどうか試させる積もりであった、そして症状が同じなら、私のバケットに間違いないし、穴が開いていてバケットにエアーが溜まらず、ケツが上がらなかったら、どう言う事だ、と詰め寄る積もりだった。

サニーが戻って来た、手にバケットは無い、さては処分しちゃったか?、そうだとすると、ちょっとメンドイ事になって来るなあ。

続く・・・・。

約1年間にも渡り、私を悩み続けさせた車の故障、          フィリピン自動車修理工場のダマシやズルの実態を
その故障発見から修理完了までの長い道のりは、          全てさらけ出した貴重な実体験記録、涙と笑いで綴った
常に付きまとうフィリピンならではの大ジレンマと           一大悲喜劇 『エッペのケツ』騒動記 新連載開始しました。
戦い続けなければならない長く苦しいものでした。
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