今日の登場人物が最後の登場人物です、クリックで自己紹介。
その21 トラモのオヤジ大喧嘩!!
ドライバーはドラが田舎へ帰ってから新しい月9月に入って直ぐ見つかった、エミさんが連れて来た今度のニュー・ドライバーは、一寸カクヅラで鼻の下の長いのを誤魔化(ごまか)すために髭を生やしてる、おまけにいつも無精ひげ、二重瞼(まぶた)のタレ目、年は40凸凹、背はエミさんより小さいから160cmは無い。
しかしこの男、良く気が効く、聞いて見ると前も外国人のプライベート・ドライバーの仕事をしていたそうだ。
田舎はエミさんと同じビコール州、そして・・・・何んにしようかなあ??・・・・大阪村じゃ私と話が合わないし・・・・ヤッパリ江戸っ子村かあ?ドラ二代目誕生!!てとこか。
フォードから私に電話が入ったのはニュー・ドラの仕事初めの前日、もう9月も何日か過ぎた日だった、絶対に聞き覚えたくない声のサニーが
『真に残念ながらポンプは直って御座らん、何度もテストしたので御座るが、ヤッパリ駄目で御座る』
『それで、違うポンプを付けると、正常に成るのか?』
『そうで御座る』
『じゃあポンプ交換しかねえ、って事つか?』
『そういう事に成るで御座る』
『所で、最後の宿題はどう成った?まだ答てえは貰っちゃ居ねええが?』
『良い答えがまだ貰えないので御座る』
『お前めえさん、イッタイ年あ幾つだ?、物事ってのはナ常識ってもんがあるんだ、それッ位れエ解るだろうが、エエッ?こんな事で一ヶ月以上も答てえを待たなきゃなんねえのかアアッ?』
『しかし・・・私ではどうにも・・・』
『解ったッ、お前めえの上司出せッ!!社長だせッ!!』
『社長?・・・で御座るか?』
『あたぼうヨッ、て前めえじゃ話ん成ん無ねえヤッ!!』
『それでは・・・もう少し時間を・・・』
『いつまで掛かってやんでいッ、俺あもう待てねえ、いいから社長出せッ!!』
『お願い申す、もう一度チャンスを・・・』
『オウッ!サニーさんヨ、あんまり俺を甘く見んなヨ、て前めえの言う事一切合切(いっさいがっさい)飲ませようたって、そうは問屋が卸ろすもんけえッ!!』
『よ〜く解ったで御座る、もう一度話して見るで御座る』
『何んでエ!お前めえさん、俺が怒らなきゃ言う事聞かねえのか?冗談じゃねえぜ、ッタクウ・・・・・・よおおし、そんじゃあ、最後のチャンスくれてやらあ、だがなオイッ、サニーの旦那ヨ、NOって答てえは受け取んねえよ、俺らあ』
『承知したで御座る』。
しかしこいつあ困った、トラモのオヤジに電話した
『オヤジ、ダメダとよ、困ったなあ』
『んんんん・・・・おかしおまんなあ、此処では何んでも無いんやけどナ〜』
『どうだ、オヤジ、お前めえさん、フォードに電話して見ちくんねえか?こんじゃあ水掛け論だあな、オヤジは正常だッて言うし、フォードじゃ異常だッて言うし、どうにもならねえや、ナッ、お前めえさんから直接フォードに電話して、いってえどう成ってんのか聞いちくんねえ?プロ同士だあ、その方が話しあ早ええや』
『そうでんな、宜しおま、ほな、わてからどない成ってんのんか聞いて見まひょ』
『そうしちくれ、相手の名前めえはサニーって男だ』
そして電話番号を教えて、
『今、俺がサニーの野郎をドヤシつけちゃったとこだ、電話あ明日にしてくんねえ、俺が明日朝一でオヤジから電話が行く事サニーに言とっから』。
次の日はNABYで毎月1回やってるプロが集まってのミーティングが有る、内容は多分、先日ボエンディアで日本人と一緒に居る時に、ピストルで撃たれた仲間の見舞金の話しであろう。
サニーに電話して、"前にポンプを直したトラモのオヤジが、そっちへ電話するから、よく話してくれ"っと言って置いて、トラモへ寄ってからNABYへ行くつもりで家を早く出た、今日はドラの初仕事だ、はたしてどうだ・・・・。
下へ降りてドラを呼ぼうとしたら、もうスペゴンが門の外で用意されていた、良く気が効く、それに乗って"おや?表に出ていた割には随分中がひんやりしているな?"っと思い聞いて見た。
『ドラ、やけに車ん中がヒャッコイね?』
『ヘイ、朝起きて水をたっっぷりかけて冷やした後、日陰で窓を全部開けて風を通して置きやした』
『偉いね!お前めえは、そんな事何処で覚べえた?』
『いや〜、こんなのプライベート・ドライバーの常識っすよ、これが仕事っすから』
こいつあ参った!驚き桃の木山椒の木(おどろき、もものき、さんしょのき)だあ、こんなフィリピン人も居るもんだネ〜っと、かなり久しぶりにフィリピン人に感心した、道も良く知ってる、こりゃお給金モチョット上げてやってもいいかなあ、そんな事を考えてトラモに向かった。
トラモの工場に着いて『オヤジ!』っといつものように声を掛けようとしたが、オヤジが居ない、その代わり大きな怒鳴り声が事務所の中から聞こえて来る、オヤジの声か?・・・何んだあア?・・・あのオヤジ怒る事あんのか?そう思わせるほどいつものんびりしてニコニコ顔を絶やさない様なオヤジである。
そのオヤジが尋常(じんじょう)ではない怒り方だ、誰か従業員が飛んでも無い失敗でもやらかしたかな?っと思って事務所を覗いてみると、オヤジの他には誰あれもいない、オヤジが怒っているのは電話に向かってだった。
側に居た従業員に
『どしたんだ?オヤジ、すげえ怒り方だな、何んか問題でえでも有ったんか?』
『旦那、相手はフォードですよ』
『何ッ!!フォード!!ほんとか?』
『もう10分以上あんな調子です』
間もなくオヤジの声が静かになり電話を切ったようだ。
『どうしたんでえ?、すげえ剣幕(けんまく)だったなあオヤジ、相手はフォードだそうじゃネエか?』
『旦はん、エッペ、フォードから出しなはれ』
『出しなはれッ!たってお前めえ・・・・急に言われても・・・ポンプの保証問題デエだって・・』
『解かってまんがな、今その話もしましたんや』
『いってえ、フォードと何が有ったんだ?詳しく聞かせて貰おうじゃねえか、エッ?』
『ほな、お話しまひょ、あのサニーって男はんなあ、あらあきまへんでえ・・・』
と切り出したオヤジの話を掻い摘(かいつま)んで説明するとこんな事であった。
ポンプはオーバーホールもして、テストを何回もかけたが全くこちらでは異常が無いが、フォードではイッタイどこに異常が有ると言うのか説明して欲しい、とオヤジが言うと、サニーはポンプその物に異常が有るという事ではなく、ポンプとホースの接続部分の具合が悪いのだっと言う。
それならばそこだけ直せばいいではないか、ワザワザ本体全部取り替える事も無かろうとオヤジは極当然の事を言って、次のサニーの言葉にオヤジは切れちゃったらしい。
サニーは、それは大きなお世話だ、フォードのやり方に口を挟まないで欲しい、何処の修理屋か解らないが、ポンプを取り替えるならフォードでやる、町の修理やが解らないくせに勝手な事を言うなっ、と言われたらしい。
っと言う事はフォードでも大した故障ではない事は解っていた、解った上でポンプ丸ごと交換と言ってた事に成る、フォードはとんでもない詐欺師(さぎし)である事が解った、こう言うやり方が奴等の常套手段だったのである。
オヤジは頭に来て、ポンプがまだ保障期間内にフォードに修理に出したんだから、それを引き伸ばして置きながらお客にポンプ代を請求するとは汚すぎる、っと怒鳴ったら。
フォードのやり方をお前の様なタダの修理やに指図される覚えは無い、っと言われますます怒ったっと言う事である。
そして今度は、これを聞いた私が切れた!!
『エッペのケツ』騒動記ついに完結ッ!
その22 巧妙に仕組まれたフォードの手口
『アンニャロウッ、俺の前めえじゃあ、しおらしい事ぬかしクサリやがって、裏で飛んでもネエ悪事考げえていやがる、も〜う勘弁できねエ、これからフォードへ殴り込み掛けて、サニーの詐欺野郎をブチノメシテ来るッ!!』
『まあまあまあ、旦はん、熱くなったらいい事おまへん、あんさんの言いたい事、み〜んな、わてがさっき言いましたがなあ、もうフォードなんて、けち臭いとこ諦(あきら)めた方が利口でっせえ』
そしてこうも言った『わてがあんじょうしまっさかい、フォードからエッペ引き上げなはれ』
しかしこのままでは何とも腹の虫が治まらない、結局は全部フォードにし仕組まれた、バケットも、ポンプも・・・・"悔しいたら有りゃしねえ、爆弾持ってて投げ込んで来るか?それとも誰かにやらせるか?"。
これがフィリピンの本当の裏の実情、サニーと言う苦情処理が、最初から前に出てくるのもおかしな話であった、反省点は有っても、我々にはこんなに巧妙に仕掛けられたら全く見抜く事が出来ない、これでトラモのオヤジが居なかったら、どう成っていた居た事やら・・・考えると恐ろしくなる。
オヤジは続けて、
『エッペ、今直ぐ取りに行かなあきまへんでえ、余裕を与えたら何しよるか解かりまへんさかいに』
『よしッ!、それなら今俺が行って取ってくる!!』
『チョッチョッっと、旦はんッ!そらあきまへん、あんさん今行ったらあきまへんがなあ、みんなぶち壊しやあ、ドラはん、あんさんが行ったら済むこっちゃ、あんさんいておいで』
私が行くっと言うのをトラモのオヤジはドラに行かせろっと言って聞かない、そんじゃあサニーに電話してエッペを出す事を言おうっと言うと、又オヤジが、フォードへは電話も何もしないでいきなり行った方がいいと言う。
ここはオヤジの言う事を聞くしか仕方が無いからドラに
『ドラ、何か有ったら、俺は此処にいるから、オヤジの事務所に電話しろ、いいな』
と言い渡して送り出したが、ドラの事では無いが、チョット気掛かりな事が有るには有る。
"こりゃ今日のNAVYのミーティングはキャンセルだな"プロの一人に連絡をしてドラを待つ事にした、そして待つ事20分、案の定ドラからオヤジの事務所に電話が入った、何か有ったに違いない、悪い予感は又も的中した。
フォードは土壇場(どたんば)に成ってまで諦めない、又仕掛けて来やがった、しかも事も有ろうに以前と全く同じ手口、アラバン・フォードで最後の最後に使われた手、オルタネータが故障して取り替えないと動かないっと言っているらしい、こりゃフォード共通の手口だ、ケツノケバまで毟(むし)り取らないと放さない、吸血鬼ドラキュラ会社である。
トラモのオヤジに、私が前にもアラバンでやられた事を話すと、オヤジがサニーに電話をすると言う、サニーとオヤジはさっき大喧嘩したその直後である、又ドンパチ始めるんじゃないかと、私はかなり期待していた、
『今度又喧嘩売って来やがったら、俺が相手ん成ってやる!』
と身構えて電話の側。
しかし、とっくに正気に戻ってたオヤジは私の期待を完全に裏切りやがった、オヤジは自分の所でオルタナータも直すから、一切エッペには手を付けるな、エンジンだけ駆けて車を直ぐ渡せっと言い、途中で『俺に話をさせろ』っと言ったが聞き入れてくれない、一方電話でも、サニーが何を言おうと、それも一切聞き入れなかった。
これでオヤジの言う事が正しい事が解った、明日に成って取りに行ったり、連絡してから取りに行ったら、又何んか違う手を仕掛けられていたに違いない。
間もなくドラがエッペに乗って帰って来た、私がどうだったっと聞くと
『なにしろエッペを引き渡すのを嫌がってしょうがねえんで、これ以上嫌がらせをやるってえと、ウチの旦那呼ぶぞッ、って言ったら、シブシブ渡しやがった』
案の定オルタネータは故障などしちゃいない、当りまえだ!、どこまで汚ねえ手使いやがんだ、オヤジは従業員に言ってポンプを外しに掛かっている
『旦はん、明日の朝エッペ取りに来て貰えんやろか?』
『でえじょぶなんか?』
『直すとこは解ってマ、修理の時間は1時間ほどで終わります、そやけどテストして見んことには心配でっさかい』
『解ったが、オヤジッ、朝はマズイヤ、ホレッ、ナンバー見ちくれ、・・・・まだ車検終わってねえんだ』
そして次の日の夜、エッペを引き取りに行った、どうして夜かというと、訳がある。
もう9月に入っている、私の車の末尾は8、フィリピンでは車検月は末尾番号で決まる、フォードに入れたままで、8月末までに終了しなきゃ成らない車検終了のナンバー・プレートに貼るステッカーもまだ貼られていない、その為、闇に紛れてエッペっを出しに行ったっと言う訳、ドラがフォードからエッペを出しに行く時もこれが気掛かりだったのである。
次の日の夕方、薄暗くなるのを見計らってトラモへ行った、朝オヤジに電話して、エッペのケツに異常が無い事は確認済みである、トラモへ着いてエッペを見ると、見事に修理完了していた。
オヤジは最後にこう言った
『旦はん、フィリピンの悪いとこ沢山見てしまはりましたなあ、わいもフィリピン人さかい、恥かしいですわ』
『うんん、確かに沢山見た、でもオヤジ見てエないい男が居る事も分った、いい勉強にも成ったヨ、オヤジにゃあ世話ん成ったなあ、ホントに有難とヨ、これえ・・・少ねえけど、取っといてくんな』
っと5,000ペソ出した俺に、オヤジは
『何言ってまんねん、わてとこの責任だす、こんなもんよしとくんなはれ』
こんな言葉、私はフィリピンに来て始めて聞いた様な気がした。 その後の事、不思議な巡り合わせですね〜、エッペを次の日車検に出したら、それを待っていたかの様に、スペゴンのタイミング・ベルトが切れて今度はスペゴンが入院してしまいました。
かなり疲れたんだと思います、酷使しましたからネ〜、老骨に鞭打って良くがんばってくれました。
フィリピンの自動車修理の実態、お解かりに成って頂けましたでしょうか?皆様には是非お役に立てて頂きたいと願うばかりです。
此処に出てくる人物は全て実在の人物です、そして話には嘘も誇張(こちょう)も有りません、(イヤッ!誇張はチョット・・・)こんな思いまでして、なおフィリピンに住んでいる私はやっぱりフィリピン依存症候群に掛かっているのかも知れません。
否!!完全に掛かっています。
終わり
(2008/11/20記)
皆様長い間お付き合い頂きまして真に有難う御座いました。
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