連載手記『エッペのケツ』騒動記十六
第三章 エ〜エ!ウッソだ〜!!フィリピン何処もかしこも疑念の渦
その1 オヤジの弟子。 その2 GM交代劇の行方は?

今日の新たな登場人物。
登場人物をクリックすると自己紹介します。



その1 オヤジの弟子。
ウイリー、ビック、comecomeのフォローを並べて見ました、3人ともこのスウィングは良くないです!!写真クリックで拡大。




私はエミさんの所へ行って見舞ってから、トラモへ行く事にして、家を出た。
エミさんの病室からは泊りがけで看病に来ている妹、メアンの大きな声が廊下まで漏れていた、『どうでえ、具合ええは?』病室に入って声を掛けるとエミさんは腹を抱えながら笑っている真っ最中、笑うと腹が痛いと言うエミさんを面白がって笑わせて居るのがメアンだった。

これなら明日退院間違い無しだ。
ひと笑いし終わったエミさんが真顔に成って、これは聞き捨てに出来ない重大な事態が今ビリアモルで起こっている事を私に告げた、話の核心はビリアモルのGMが今年イッパイで交代すると言う事である。

これは傍観していれば済む問題では無い、又深刻な問題に成らなきゃいいが、これが私の頭にとっさに浮かんで来た事だ、かなり心配な、大変重要な事である、着任するGMによっては商売のやり方から家賃の金額まで全てが変わる可能性も有り、しいては売り上げまでも左右し兼ねないからである、以前私はこれを無視して、いやシステムを知らないばかりに、大損害を被った事が有る、その時は店の家賃が一気に倍に跳ね上がった。

GMとはジェネラル・マネージャーの略、ビリアモルのトップである、今のGM、顔は面長、しかし異国人工場のお馬さんほどでは無い、出っ歯で話し方もボソボソ何を言っているのか聞き取るのに大変である。
何処と泣くおどけている様な歩き方は背中を丸め半分禿げ上がった頭を前に突き出し、その頭を鶏が歩く時するように頭を前後させて調子を取りながら、少しうつむき加減でヒョコヒョコと歩く、そんな彼との付き合いは長くもう4〜5年の付き合い、気心も知れ、友達の様に付き合っている。

これ以上のGMを、今私が望めるとしたら一人しか居ない、この人なら絶対着任して貰いたい人、私の親友である、可能性が無い訳では無い所か、彼から以前聞いた話では近々どこかのゴルフ場に行くっと言っていたからである、勿論ビリアモルとは言わないが可能性は大いに有る。

軍隊が所有するゴルフ・クラブはフィリピンには大変多い、空軍が所有するビリアモルの近くにも海軍のNAVY,その隣ポート・ボニファシオには陸軍のゴルフ場も有る、そしてその何処のゴルフ場のGMも殆どが退役軍人で占められている。

ゴルフ場を含め軍の厚生施設を管理する部門が軍隊の中に有る、その担当官を chairman(チアマン)と呼んでいる、彼が人事権の一切を握っている訳だが、このGMと言うポジション、やり方によっては家の一軒位直ぐ建っちゃうほど実入りが良い。

兎に角動かす金がデカイ、10ミリオンなんて小さい方である、だからである!、後はご想像にお任せ致します。
チアマンの胸先三寸でGMが決まる、殆どが仲の良かった、又仲良くしてくれた元上司が選ばれるのが自然。
しかし!中にはぜんぜん自然じゃないのも有る、理由は色々、チアマンとて現在上司がいる、命令以外でも上司の言う事を聞かなければ成らない時もある、そんな事ではなくもっと直接的な事もある、チアマンも人間、人間は得てして金が掛かる生き物である、後はこれもご想像にお任せです。

ビリアモルはその噂で持ち切り、自分たちの生活に直接響く事だから、これほど関心が高い話題は他に無い。
今のチアマンは誰だから、キット誰がGMで来るっとか、いや今のチアマンとあの人は仲が良くなかった、とか色々思いを巡らす。

勿論私とて人事では無い、早速友達のジェネラルに電話をして聞いて見はしたが、教えてくれる訳は無いのである、軍関係の人事はトップ・シークレット、例外などは無い、ゴルフ場のGMとて軍の人事下に有る訳だから教えてくれる訳が有る訳無い訳である(シツコイ!!)。

しかし大きなヒントはくれた、『誰がGMに成っても驚かない事』これだけだが、この言葉を聴いた時、こりゃあもしかすると大変な事になるぞ、っと大きな胸騒ぎを覚えた。
この件は又ゆっくりその時が来たら説明するとして、実はその時他にもビリアモルには問題が持ち上がっていた、一時は真剣に店を閉めようかとまで考えた事も有った。

あれこれ考えて見てもセン無い事は解っていても、GM交代劇が近付いている事は確か、考えている最中にトラモの工場へ着いてしまった、今は真っ最中の問題に取り組む事が先決だ。
『オヤジ、どうでい、エッペの具合ええは?』

『いや〜旦はん、ポンプだけではあかんかったでんな〜、今やってまっけどな、チョットやっかいでんな〜』
『そんで、見通しはどうなんでい、ヤッパリお前めえんトコじゃあ難しそうか?』
『そん時はそん時で、チャント手は有りまんがな〜、そない心配せえへんでもダイジョブやて』
『なんでい、そのお・・・手、ってのは、他に方法があんのか?』

『いや〜、実はでんな〜、前に使こうとった男が、今フォードはんに居てるんですわ、昔っからいい仕事しよったさかいに、今にきっとようなる思とったんやけど、なんと、工場の主任だっせ〜、この男に連絡取ったらきっと来よりますさかい、まあ心配せんと待ってておくれやす』
『へえ〜!、こりゃオッドロイたねえ!おやっさんにそんな弟子が居るたア、こッつらチイとも知らなかったぜえ』
『そんな、弟子何んてもんとチャイまんがな〜、昔の従業員でんがな〜』

『いやッ!そうじゃねえ事ッくれえ俺にだって解らあ、なるほどねえ、オヤジが出来てると子も立派に育つもんだ』
『今は仕事中やさかい、よう連絡できしまへんけど、昼休みにでも電話入れてみますよって、待ってておくんなはれ』
『おう!そんじゃ、アンジョウたのんまっさあ!』

一安心して良いかどうか迷ってる、悲しい習性が何時の間にかすっかり身に付いてしまっている、兎に角フィリピンで無闇に安心していると、スカッと足元をすくわれて、余計に苦しむ、安心すればしただけどんでん返しのダメージは大きい、心配なんて簡単に出来るが、いつしか安心する事には臆病に成ってしまった。

ポンプじゃねえとすると、バケットかあ?。

2ヶ月経って振り出しに戻った感じである、キョンシーの言った言葉をもう一度考えて見た、バケットが2つとも同時に壊れる事は考え難いから多分違う箇所、例えばホースとか・・・・こんな事で有った。

バケットが左右両方が空気漏れを起こす事は確立は低いがゼロではない、しかし・・・・片方だけに穴が開いていた場合は本当に片方だけのケツしか落ちないのだろうか?

キョンシーの言葉を鵜呑みにしてはいけないかも知れないと、かなり遅まきながら考え直した、帰ったら早速調べてみよう。

その2 GM交代劇の行方は?


ティーチングがNAVYで1時から有る、エミさんの事は一安心出来たが、エッペの問題の他にGM交代の新たな問題が登場して来た、これはエッペのケツ所ではない重大で深刻な問題で有る。

日本に居る時に、こんなに毎日悩まされ続けていただろうか?問題が有ったとしても全く種類の、っと言うより次元の違った問題だった様な気がする、まずエッペに今起きている様な問題など日本だったら問題に成ることすら有り得ない、前出の保険屋の問題にしても然りである、それではGM交代による影響はどうだ?日本で例えるとしたらいったイッタイ何で有ろう、有りそうでなかなか浮かんで来ない、又私の今までの日本で暮らしていた時の経験には全く無かった事である。

ティーチングの最中にトラモのオヤジから電話が入った、
『旦はん?今でんなあ、疑わしい箇所当たりよるんやけど、難儀やナア〜、エアサスちゅうのんは、なんせ一日置かん事には答えが出て来よらへん』
『ッだよなア、それが修理の進まねえとこなんだ、エアサスの故障はホントにメンドクせえなア、それでオヤジの弟子の方は連絡付いたか?』
『ほや!、その事でんがな、さっき話しましてな、もし明日エッペのケツがあかんかったら、連絡しよればアサッテ来るゆうてましたわ』

『解った、そんじゃ又何んか変わった事が有ったら、連絡してくんな、頼んだぜ』電話はそれだけだったが、"あのオヤジ結構頼りに成るじゃねえか、人は見かけによらネエとはよく言ったもんだなあ"、そんな事を考えていて、今日はティーチングに身が入らない、これでは生徒に申し訳ない、もう少し時間が有るなら後1箱分打って行かないか?、と聞くとやって行くと言うのでその時は身を入れてティーチングをして、終わった頃にミスコールが入った。

ドラからである、『旦那、難しいやこりゃあ、何処も車を直接見ネエ事にゃ、話になんねえや、旦那の言ってたあの工場ネ?何んだけ?・・・え〜とおお・・・エスタバ・モータースだ、あそこも持って来てくれねえと、なおせるかどうか解らねえって言ってましたぜ、どうしやす?』

『そうだったなあ、そ言やあドラ、てめえをエバスタにやったんだっけなあ、すっかり忘れちまった、じゃあもういいや、帰けえて来い』
『いいんですかい?エッペの修理工場めっけなくって?』
『もういいよ、それよかおめえ、エミさんとこ行って、明日の退院は何時なのか聞いて、必要なもんはねえかそれも聞いて来い、いいか!てめえは大え事なこたあすぐ忘れる、紙いチャント書いて来い、解ったか!』

『旦那、冗談言っちゃいけねえや、さっき何んて言ってましたっけッてんだ?、あっしをエバスタに使いに出したの忘れてた?、って言ったんじゃネエんですかい?、自分の事あ棚の上に乗っけちゃって、舌の根も乾かないうちにとはこの事ですぜ?旦那、おう!旦那!聞いてんでしょうね!・・・・またツンボのまねかよオ・・・』

『ッるせえ!てめえの御託なんか聞く様な耳ア持っっちゃいねえよ!、早く行け!、病院に!』
私はドラの返事を待たず電話を切った、どうもああ言う切り返しだけは確かに上手である、バカじゃないらしい、私も病院へ行こうと思っていたが、ビリアモルへ行ってもう少しGM交代の情報が聞きたかった。

ビリアモルに行って見ると、直ぐにプロ連中が寄って来た、『ホフ、たふぇてふふぁねえ?こんふふぉのシーエン?』真っ先に聞いて来たのはウィリー、(ボス、誰でしょうね?今度のGM?)っと、言っている様だ。

もうこの男とも20年以上の付き合いだ、昔はプロの中でも結構ゴルフは上手かったが、4ヶ月前に脳溢血で病院に担ぎ込まれ、命に別状は無かったものの、最近はメッキリ年取っちゃって、ビリアモルに来ても一日中座りっぱなし、目は思いっきり垂れ眼に成って、顔もシワクチャだ、話している事なんかサッパリ解らない、これで47才じゃ俺はまだ40才にも成ってない様に見えるはずだ。

『俺も解らねえから来て見たんだ、皆んな、誰だって言ってる?』と反対に皆んなに聞き返すと又ウィリーが答えようとするから『お前はもうよせ、フガフガしてて何言ってるのか解らねえや、ビックどうなんだ?』
彼はビックサンティヤと言う名前、不運な男である、現在43才、アマチュア時代はフィリピンのナショナル・ティームのキャプテン格プロに成っても戦績は素晴らしく、此処ビリアモルのコース・レコード63の記録保持者でも有る。

しかし8年前から腎臓病に悩まされ、5年間透析を続けて、3年前に腎臓提供者が現れ、移植手術を受けた、結果は良好で有るが、GABライセンスの取得はむすかしい、小さい目、たれ眉毛に大きな鼻がアンバランスのビックはなかなか頭の切れる奴である、その男がウイリーに代わって

『ノラスコがサブって事は確からしいんですが、肝心のGMがさっぱり見当が付かないんですよ』
『ノラスコ?って言うとあの金持ちのケルネルか?』
『違いますよ、弟の方ですよ』
『弟お?俺は知らねえぞ?空軍に居たのか?弟が?』
『知らなかったんですか?でもノラスコはボスの事知ってましたよ』

『まあそんな事いいけど、肝心のGMは誰なんだか見当も付かねえのか?』
『実は、今のチアマンはゴルフやら無いんですよ、だから見当が付かないんです』
『えッ!ゴルフしねえのか?チアマンは?、それで誰も解んねえって訳なのか?』
『そうなんです』
『でも、そ言ったてGMはゴルフの解る奴が来るんだから見当ぐれえは付きそうなもんだがナア・・・』
『今のチアマンを知っている奴は、プロの中じゃ誰もいません、顔も知りませんし、名前だって始めて聞きますから』

軍隊の厚生施設はゴルフ場ばかりではない、テニス、水泳、乗馬、サッカー、バスケットボール、・・・・その他スポーツ施設以外にも、海や山の保養施設やホテル等、沢山有る、ゴルフをやらない人がチアマンに成ったって少しも不思議は無いのだが・・・・。

その中でも一番金の掛かかって、一番施設の大きいのがゴルフ場、バスケットボールの何百倍もの投資金額である。そんな事から今までゴルフが解り、ゴルフ場が解り、管理出来る人間がチアマンに選ばれていたが今度はどうも違う様である。

友人のジェネラルが言った言葉が思い出される、『誰がGMに成っても驚かない事』この事だったんだア。

その日家に帰りエアサスの事を調べてみると、どうもエアー・サスペンションに送られた空気は左右のバケットにホースでつながっていて片方のエアーが減るともう片方の空気圧が高いほうのバケットから、低い方へ流れる、その為1つのバケットに空気漏れがあった場合は、もう片方に影響が出て車高は平均して下がる事が解った。

そうか、そう言う事だったのか、あの時キョンシーが言ったもっともらしい事を何で疑わなかったんだろう、これは自分に都合の言い意見は正しいと思いがちな良い例で有った。
そうするとバケットの可能性が大に成って来た、もしそうで有ったとすれば私の大失態であり大出費と成る。

ここはジタバタしないでトラモのオヤジに任せて見るか、まあ、しかし明日の朝はエッペのケツは落ちているだろうナア。
次の日の朝トラモへ電話を入れてみると、案の定エッペのケツは下がっていた、仕方が無い、オヤジの言う様に後はオヤジの弟子に期待を持って、2〜3日待ってみるか。

今まで私が予想した事で良い方に予想したのははずれ、悪い方に予想したのは全部当っている、もう先の事を予想するのはヨソウ??

続く・・・。

約1年間にも渡り、私を悩み続けさせた車の故障、          フィリピン自動車修理工場のダマシやズルの実態を
その故障発見から修理完了までの長い道のりは、          全てさらけ出した貴重な実体験記録、涙と笑いで綴った
常に付きまとうフィリピンならではの大ジレンマと           一大悲喜劇 『エッペのケツ』騒動記 新連載開始しました。
戦い続けなければならない長く苦しいものでした。
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
111
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介
自己紹介