連載手記『エッペのケツ』騒動記十
第二章 エ〜エ!ウッソだ〜!!フィリピンの実像と疑惑
その6 極悪非道、フィリピン式病院 その7 ポンプ?モーター?

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6、極悪非道、フィリピン式病院!



それから待つ事15分、もう少しで本当に切れるっと思っていた時、医者が来た,偉そうにさも医者だってタイプ、小太り、めがね、髭、タダやけに声がかん高い、そして診察するから表で待っててくれっと、さっきの看護婦が言う、表に出るとメアンが『さっきの先生と違う、さっきの先生はもっと若かった』っと言って、お母さんと何か話している。

ものの5分もしないで医者が出てきた、看護婦はまだ中だ、そして言う事は『盲腸の疑いが有りますから、もう一度検査をします、もし盲腸ならば、今日は外科の助手がいませんので、明日手術をします』っと言う事だった。
ヤッパリ!ナッ、だからフィリピンの医者は信用出来ネエンだ!このまま放って置いてパンクでもしたらそれこそ大変な事に成ってしまう、危ない所だった。

後は私がここにいても何の役にも立たないのが解かっているから、今度はエッペを見に行く事にした、修理工場は此処から5分も掛からない、 ロハスボリバードに向かうスーカット通りに面したキリノ通りの手前にある、町の修理工場にしてはかなり立派で、設備も充実している(写真)、車を持ち上げるリフトが左右に3台ずつ有り、工場の中も綺麗である、私のエッペは右側一番奥のリフトに載せられ兄ちゃんがしたから何かやっていた(写真)。

その兄ちゃんを呼んで『どうですか?どこが悪いか解かりましたか?』と聞いて、彼の顔を見て私はビックリした。
長年生きて来てそれはイヤと言うほどに色々な人間の顔を見てきた、最近では鬼を見たってビックリなんてしない 、所がどうだ、今、目の前にある顔は・・・・!このニイチャンの顔の長さにはこの俺様もビックリした。

背は小さいのに、そのやけに顔の長い兄ちゃんは、その長い顔をカバーするためだろう、髪の毛を長く伸ばしていた、垂れ目のニイチャンが顔と同じ様に間延びした口調でのんびりと喋る
『いや〜、まだハッキリした事が解からないんスヨ〜、何しろ一日一箇所しかミランナイっすから〜。』
『でも一週間もありゃあ、7箇所みられるでしょ?』
『診るとかぁイッパイ有りますからネ〜、でも大体見当は付いてるんすが〜』

そして・・・。
『明日〜、もう一回来て見てくれませんかネ〜、そん時までは〜解かると思うんスヨ〜』 仕方が無いんで明日来る事にした、明日は忙しく成りそうだ!エミさんの手術は絶対有るだろうし、ここもすんなり行けば良いが・・・。
フィリピンですんなり行った試しなんか殆ど無い、だから今度もスンナリ行かない。

次の日やはりNAVYでのティーチングもそろそろ終わりの頃、エミさんから電話、だが思った通り声の主はメアンだった 『クヤア!困った事に成りました、お金が今直ぐ必要です』
『何で金が必要なんだ?』
『ヤッパリ、アテ(タガログでお姉さんの事をアテっと言う、短くテッ、とも呼ぶ)は盲腸だったんです、それで手術するのにお金が必要です』
『だって保険が有るだろうが?手術が終わったら足りねえ分を払えば良いんじゃねえのか?』
『病院がそれは駄目だって、保険金は後で請求するんだって、手術代の半分を今払わないと、手術出来ないって言われた、どうしよう』

耳を疑ったが
『チョットまてよ!苦しがってる人間を目の前にして、金を払わなきゃ治療しないって言ってるのか?』
『そうです、それがシステムだって』
何なんだこの国にぁ、心底腐り切ってやがる!。
『幾らだって言ってる?』
『6万ペソの半額3万ペソだって』
『解かった、出来るだけ早くそっちへ行くから心配スンナっと言っとけ』

こんなことが有って私は遠い昔の事を思い出した、もう20数年前の話。
その当時発展しつつ有ったPP(フィリピン・パブの略)のオーディションをエルミタのとあるスタジイオに見に行った時に起きた出来事である、オーディションと言っても、その当時はビザ申請もきつくなかった様で、審査対象は歌でも踊りでも無く、顔とスタイル、それに日本での経験だ。

当時のは生バンドでオーディションをしていて、ある女の子が歌っている最中に事件は起きた。
それまで何事も無く元気で演奏をしていたピアニストが、突然ピアノを弾きながら床にずり落ちた、後ろにひっくり返るでも、ピアノにツップスのでも無く、ズズズズッっと崩れ落ちていった。

なにか冗談でもやっているのかな?っと思っているとピアニストはにわかに激しいケイレンを起し始めたではないか、周りにいた人やバンドの他のメンバーが水を持ってくる、スプーンを口に入れる、救急車を呼ぶのは勿論、大騒ぎとなった、そこに居合わせた100人以上の人間の見守る中の突然の出来事である。

ピアニストは目をむいて倒れたまま体のケイレンは尚も続き、時にはものすごく強い力で体を弓なりにさせて苦しがっている。 暫らくすると彼は落ち着いた?様だ、電話をしてから30分以上も掛かってやっと救急車が来た時にはには、ピアニストは静かになっていた。

私が落ち着いたのか?っと思ったのは全くの見当違いでピアニストはその時昏睡状態におちていたのであった、もう1刻の猶予も出来ない、早く処置をしないと危ない状態なのは誰でも解った、口からは血の混じった泡をふいて、目は白目をむき、のどがぴくぴく小さく痙攣している。

救急隊の人は彼を連れて行く前にこの場に及んで家族に連絡を取ろうとして必死に成っている、当時携帯などないし、ランドライン(NTTのような有線電話)でピアニストの家の近くに電話をして家族を探している様子である、バンドの一人が怒って「早く病院へ連れて行け!」っと何回も救急隊員に迫っていたが、一向に連れて行こうとしない。

その内オーディションの責任者らしき人が出て救急隊員と話をし、やっと彼を連れ出したが時は既に遅しだった様だ、後で解った事だが、彼は残念ながら助からなかった、その時救急隊員が病院に運んだ時は既に駄目だったそうである、何しろ彼が倒れてから病院に着くまで何と1時間半も掛かっていたと言うのだからお話にならない。

当時救急車は私設も有って(今でも有るらしい)、その時呼んだのは私設の救急車、救急隊員は支払いの保証を確認していたのだと言う話、昔からフィリピンは同じ事の繰り返しだ。

病院に着いて話を聞いてみると、手術の用意は出来ているが、手術代の半金30,0000ペソを支払って貰うのが病院の規定だと言う。
兎に角此処で話をしていても手術が遅れるばかりなのでまず料金を払った、成る程!こう言うタイミングで金の請求をすれば誰でも支払わざるを得ない、まるでヤクザモンのする事だ、悪知恵だけは良く働きやがる。

後日、良識あるフィリピン人に聞いてみると、『実はフィリピンの病院は、一部の国立病院以外は皆前払いです、っと言うよりそうせざるを得ない状況なのです、なにしろ病院が潰れてしまう位、不払いが多いのです』 成る程ねえ!
今度はフィリピンを良く知っている私が、納得せざるを得なかった。

手術が始まった、ドラを呼んで、エッペを見て来る様に言い付けた、修理工場はここからほんの5分程度の所に有る、原因が解かったかどうかだけでも聞いて置きたかったからだ。

そして30分後に再びドラが病院にもどって来て私に言った言葉は私が今まで全く想像もしていない事で有った。


7、ポンプ?モーター?・・・・?。


病院に戻って来たドラに、どうだ!どこが悪いか分かったか?っと聞くと、
『いやア、やっぱりネ、悪いとこはバケットじゃねえって奴ら言いやがるんでサア』
『ヤッパリな!そんで、どこが悪いって言ってた?』
『ポンプが悪い、って言うんでサア』
『何でエイ?そりゃあ、ホースじゃネエのか?』

『ポンプちゅうなぁ、バケットに空気を送るポンプのこってさぁ、そんで悪いのは、このポンプを動かすモーターがいかれてるってこってス』
『モーターがいかれてる?どうも腑に落ちねえな、モーターがどういかれてるんでい?』
『そんな事アッシに聞かれたって困らあ、旦那が直接聞いておくんなさい、駄目ですよ、そんなにアッシばかり頼っちゃ!』

『何言ってやんでい!お前めえ何んか頼った事なんか、今だかかって一度もネエヨ!それとも何か?そんなにお前めえは頼りん成るとでも思ってんのか?だからてめえはノーテンキだ、てんだ!』
『おおっとッ、おっしゃって、くれちゃいましたね!ドケチ旦那!、ついこのめえは何だって言ってましたっけネエ!"ドラ、お前めえもなかなかやるじゃネエか!バカだバカだと思ってたが、バカじゃないね!テエしたもんだ"って言ってたじゃねえですかい!』
『そんな事言った覚べえは、金輪際ネエ!』

『やだな!旦那、モウロクした振り何てエ、よして下さいよぉ?それともホンとにモウロクしちゃったんかねえ?』
『うっせエ!てめえのオダ聞いてる暇あねえ!こうなったら俺が行く!、ったってまだ手術中だ、これが終わったら行って見らぁ』
1時間位で終わると思ってた手術は、それより30分過ぎても終わらない、お母さんとメアン、それにメアンの3人の子供は心配そうに時計ばかり見ている。

エミさんの妹ブンソはエミさんに代わって店番、長兄のマルビンは私が帰るまで姿を隠している。
メアンの子供達は3人共女の子、長女は11才とても頭が良く、学校ではよくメダリストの栄誉を獲得して来るメアン自慢の娘。
2番目の子供9才でこの子はゴルフがとっても上手、真剣に教えた事など無いが、彼女のスウィングはその辺のヘナチョコプロより堂に入ってる、これもメアン自慢の娘、一番下の末娘は8才、この子は飛び切りの美人、将来は間違いなく映画スターだ、よく冗談で結婚の予約を大人達から申し込まれる、これ又メアン自慢の娘。
どう言う訳だかこの3人のお父さんだけが、メアンの家族の中でたった一人自慢出来ない人間である。

家族の不安は募るばかり、2時間に足りない事、後10分の所でようやく手術室からエミさんが出てきた、執刀医師が家族の前に現れ、手術の成功を告げると、皆は今まで経験したどんな大きな歓喜よりもさらに大きな歓声を上げて喜んだ、そして誰もが泣いていた。

それを見届けた私は、取り合えずもうここには用事が無く成った、術後の経過が順調で有る事だけを願って、エッペに取り掛かる事にした、"ポンプのモーターがいかれている?おかしいなあ?モーターがいかれてて何でケツが上がるんだ?"独り言を言いながら窓の外、目の前にはグッド・イヤーの黄色い看板が近づいて来た。

工場の中に入ると、私のエッペは指定席の様に右手の一番奥、リフトで持ち上げられた姿は昨日と全く変わらない、くっ付いてる兄ちゃんも昨日の顔長の兄ちゃん、今でも自動車修理工場にいる(はずである)、見物は自由であるが、お世辞にも決して面長等と気の利いた言葉を想像するべきでは無い、そうでないと直接彼に会ったら間違いなく腰を抜かす。

『よう!兄ちゃん!どんな具合だ』
もう昨日会っている、だから10年も前から知り合いの様な態度を取っても決して間違いじゃない、
『ああ、昨日の旦那〜、こんにちは〜』
間が抜けた様な喋り方をする、こいつまでなぜ『旦那』って言うんだ?っと疑問に思う方もいらっしゃると思いますが。

『Sir』をどう約しましょうか?っト考えた、フィリピン人が言うと『セル』っと聞こえる、しかしこいつらの言う『Sir』を、そのまま日本語に約して額面通りに受け取ったとしたら、とんでも無い勘違い、勿論目上の人や偉い人にも使うが、普通大安売りで使う場合は『旦那』位なものである。

『ヤット分かりましたヨ〜、ポンプが空気を送らないんですネ〜、モーターが壊れているんですヨ〜』
『ってこたあ、何か?バケットに空気を送るポンプのモーターが壊れている、って事を言いてえのか?』
『早く言えばそうなんですヨ〜』
『チョット待って下さいよ、っとくらあ!、何か変じゃ有りませんか?っと続かあ!なっ、お前めえさんヨック考げえてミツクレ!ポンプが!いやさ、モーターがっ、だっ、なっ、もしモーターが壊れていたら俺のエッペのケツあ上がりますか?ってんだ、どうでい兄ちゃん?』

『だから上がらないんス、だから故障してるんですネ〜』
『そりゃあおかしな話だ!お前めえさんもケツが上がってるの見ただろう?』
『私は3日目から前の奴と交代したんで、よく分かりませんが〜、私が見た時はもう上がりませんでしたあ〜』
『冗談言うねえ!、こねえだ来た時にお前めえさん、"いや〜、一日一箇所しかミランナイっすから〜"ってのんびりと言ったじゃネエか?ありゃどい事なんでイ』
『前の〜、担当が〜、そう言ってたんすよ〜』

『おいっ!ドラ、この顔長の、のんびり兄ちゃん、なにか?お前めえの達公のトコで会ったっ奴ぁ?』
『いえ、違ゲエヤス、アッシと会った野郎は、もっと人間っぽかった、こんなに顔がオッソロシク長はくなかった、こりゃ人間の顔じゃない、馬だ!』
『バカヤロウ!手前めえそんな失礼な事言うもんじゃネエ!馬が気を悪くすらあ、蹴飛ばされるぞ!』
そうドラを嗜(たしな)めておいて
『兄ちゃんすまねえ!、こいつあバカ正直でいけねえ!そんな事は有りません、アンタの顔の長さにゃあ馬だって勝てっこねえ、自信を持っておくんなさい』
こんだけあやまりゃ気も落ち着くだろう。

『ドラ!今ここにいるか、ダチんとこでお前めえが会った奴ぁ?』
『さっきから探しているんすが〜???、いねえ様です』
『名前めえは何てんだ?』
『そういやまだ聞いてなかったネ、奴の名前メエ、達公に電話して聞いてみますか?』
『そうしてみな、チョットこのまんまじゃ納得いかネエや』

暫らく話していたドラが電話を切って、
『まだ2回けえしかあった事がネえんで、名前めえを聞いてねえそうです』
『こいつあ困ったなあ、奴あ見てるんだろ?、エッペのケツが上がるを?』
『チョット待って下さいよお!奴がいた時きゃあ〜〜〜、ケツぁ〜〜〜、っむ、上がってやした!エンジン掛けてこんな調子だって見せた覚えが確かに有りヤス』

直ぐ近くの工場、ものの200mである、ケツが上がらない内に運んだのなら、上がらないまま着いちゃう距離で有った。
『こいつに聞いてみな、今日どうしているのか?』
『おう!長ヅラ兄ちゃん、年の頃ア25〜6だ、背の高けえ、細身で目のメチャ細せえチョットやさ男だ!、いやあ、お前めえには適わネエけど、髪はチョイ長だ、今日は此処にいねえそいつの名前めえ、何と言った?』
『ああ〜!そいつの名前だったら〜、キョンシーですヨ〜』
『何だあ?、キョンシーだア!ホンとの名前めえか?そりゃ』
ドラと私は同じ事を同時に言った。

『あだ名ですよ〜、やですね〜、そんな名前親が付ける訳無いじゃないですか〜、でもいませんよ〜、もうここにはア〜』
『いねえ?どうして?』
又言う事が一緒だ。
『3日前に止めましたヨ〜、郷に帰って親の仕事をやるってエ〜、それまでこのエッペはそいつが担当してたんですが〜』
『お前めえさん昨日俺に言ってた"一日一箇所しかミランナイっすから〜"って、そうすっとありゃやっぱり・・・・』
『キョンシーがそう言ってたんスヨ〜ホントに〜、私はその後引き継いだんで、よく分かんないス〜、今は上がりませんヨ〜、こいつのケツは〜』

実はこの生き証人が居無くなった事で面倒な事に成って行ったのはお解かりだと思います、しかし、どうもタイミングが良過ぎるな〜??

続く・・・・。

約1年間にも渡り、私を悩み続けさせた車の故障、          フィリピン自動車修理工場のダマシやズルの実態を
その故障発見から修理完了までの長い道のりは、          全てさらけ出した貴重な実体験記録、涙と笑いで綴った
常に付きまとうフィリピンならではの大ジレンマと           一大悲喜劇 『エッペのケツ』騒動記 新連載開始しました。
戦い続けなければならない長く苦しいものでした。
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