フィリピン江戸っ子談義
第七話 そんな大金はした金
間違ぇ探し、各々5箇所ぉずつ有やす
<<第一章『おおハマリ』>>
 「スポ野朗は不動産を手広くやっていてヨ、金ん回りもかなりんもん
だってぃ、車もすげぇんなぁ2.3台ぇ持っちたよ。
何回ぇか話した事も有る、チョットきざだが悪りい奴ちゃねぇ。

だが女にぁ目が無かった、女垂らしが服ん着て歩りいてるってもんだ。
奴ん自慢話しぁ、“狙ったら絶対落とす、外した事ぁねぇ”って事ったが
そりゃぁ奴の勘違ぇで実際ぇは逆だ、奴さんが落とされてたと見るね
俺ぁ、彼女達ちゃあ仕事に来てんだ。

内緒の話だが向けぇで“お水”ったら“春やる”てこった、そんな子がいっ
ぺぇ来てる、日本に居るだけじゃ分かんねぇ事つよ。」
 「そう言やぁ言ってたよなぁ、パスポート取る時、戸籍謄本も取れねぇ
子がいっぺぇ居るって、俺にゃあ想像も付かねぇけんど・・・。」

 「俺ぁ一人でしか飲みにゃあ行かねぇ、と決まってる。スポ野朗は1人
から団体ぇまで色々だ、殆だぁダチ(友達)か社員と一緒に来る。
俺が行け無かったその日遅ぇ時間、かなり酔ったスポ野朗が自分の
社員3人と来た。」

 「なにか会社で問題ぇが有ったらしい、しつっこく社員を叱っていたっ
てぇ話しだ。しばらくすってぇとY公を呼んで、他かのテーブルに付いて
たリミチャンを呼べっだ、出来ねぇ事ぐれぇ承知の上だ。

スポ野朗はそう言ったっておめぇ店に取ちゃぁ上客だぁな、Y公は丁寧
に断った、しばらくするってぇと又呼ぶ、何回ぇ言ったって同じこったが
今度ぁ声を荒えて喚めぇてる。

オヤジを呼べだの蔑(ないがし)ろにすんなだぁの、余んまり五月蝿
せぇんで1人の客が”静かにしろぃ”って怒鳴った、それがリミチャン
のテーブルからだったもんで“何をっ”って事に成った、相手が2人
だった事もスポ野朗を勇気付けたがこれが間違えだ、ただの2人
じゃあ無かった。喧嘩が商売ぇの地回めぇりだ。」

 「ハックサンかい、そりゃあ面倒な事んなりゃぁあった、それで?。」
 「Y公がオヤジに知らせた、近くにいたオヤジが帰ぇって来てその場
を収めた、スポ野朗とも昔っからのダチだし、その筋にも不思議と顔が
利くオヤジだ、地回めぇりもオヤジの顔を見たんじゃぁてんで大人しくなった。
一段落してスポ野朗が帰ぇる、いや帰ぇろうとしたその帰ぇり際に
言わなきゃぁいいんに一言小声で「ばかやろう!」

余計んな事言ったもんだ、どっちが馬鹿野朗だか解かりゃぁしねぇや。
その声んが地回めぇりに届でぇちゃったから、もう納まら無く成った。」
 「店ん中は大ぇ騒動、めちゃっくちゃだ。女ん子達ちゃぁ外へ逃げる、
どさくさに紛れて客は飲み逃げ、椅子ぁ投げる、テーブルぁぶっ壊す、
大きな鏡ん壁は全部割れた。

救急車を呼ぶ程じゃあねぇが怪我人は双方出た、(可哀想)けぇそぉなぁ
Y公だ、必死で店ん守ろうと立ち向かった奴ぁ全身血達磨!文字通り真っ赤
だったそうだ。せぇがぁ(最後)は誰かが警官を呼んで収めたが店ん中は凄ぇ
有様だったとよ。」

 「そりゃあ壮絶な光景だ!目に見える様だぜ。全員逮捕だなそりゃあ。」
 「いや、それもオヤジが警官と話して収めちゃた。結構やるんだそのオヤジ。
だが後日談が有るネ、こん話にゃぁ、この喧嘩如何ひいき目に見ても
両成敗じゃあ地回めぇりぁ納得出来ねぇ。
スポ野朗は相当な落とし前ぇを取られたってぇこった、
さすがのオヤジも怒って店の修繕費と休業補償は請求して取ったそうだ。」

 「おお!そうけい、ざまぁねぇてんだこんちきしょう!、
スポ野朗は自業自得だぁらしゃんめぇが、Y公さんはけぇそぉな事んしちゃった
ねぇ。所で奴ぁ、全部で幾ら掛かったんでぇ始末によ、カッツアン?。」

 「オヤジに聞いたんだが、今度のY公の働きにゃあひどく感激して結構な
ボーナスを出したらしい、スポ野朗が払った始末金が結構な額、店の修繕代ぇ
と補償で500万地回ぇりに払った金ぁ噂じゃぁでぇ一本は行ったろうって話しだ。

でもよヨッチャン、あいつに取っちゃあはした金だそうだ。」 「へ〜っ!俺に取
っちゃドデケェてェ金が端金ねぇ、有るとこにゃあ有るもんだねぇ。」

「所でカッツアンは今何処に居るんだっけ?。」 「何んだとぉ!おめぇ昼寝ん
しながら俺の話聞いてんのか?目んめぇに居るじゃねぇか、おめぇの。」
 「違ぇよう、話ん中ん場所ぉだぁな、今リミチャンと
飛行機でフィリピンに行く途中だろが?忘れたんか?。」

記 1999年5月