フィリピン江戸っ子談義
第三話 キャンセル待ちゃぁ25人!!
<<第一章『おおハマリ』>>
江戸の正月風景
 「その座席取りってえのが又てぇ変な事だったのよ、
(最後)せぇごの支度をしているっとこだったリミちゃんに“一緒に行くよ”ってったら信用しねぇ、
ホントでぇ、ってチケットとパスポートを見せたらやっとこ信用した、けど顔ぁ驚ぇてたね“だって一緒
に行こうって言い出したなぁおめぇじゃねえか”ってぇと、“まさかホントに行けるたぁ思わなかった、
チョイト困らせてやろうと思っただけだ”、ってな意味の事を言った、リミちゃんはこの時きゃあもう
かなり日本語がうめぇ、殆ど話は日本語だ、

“じゃあ行くのよそぁ”ってぇと“バカヤロウ”悪りぃ言葉はすぐ覚えるなぁ解ってる、
けど時々男っコトバに成るなぁ頂けねぇがしゃぁねぇんだ、言葉教わんの全部男だかんな。
オヤジが“チョイト狭ぇが成田迄女の子達と車で一緒にどうでぇ、俺もY公も一緒だ、
“ってもんでそうした、実ぁそうしたのが間違ぇだった。」
 「間違ぇ?なにが間違ぇでぇ?。Y公って誰でぇ?。」

 






「Y公は店のマネージャーで向けぇで店の子を選ぶオーディションが有るって言う事った、まあ、
“間違ぇ”に付いちゃあ後って事にして、車に乗ったが考える事ぁ座席ん事った、俺の持ってるチケッ
トはうめぇ事にビジネスクラスだ、これが満席ってなぁあんまし聞かねぇ。だがもし満席だったら逆に
望み薄だ、席数だって少ねぇやな、キャンセル待ちもいるに決まってらぁ、何んたってこっつらぶっつ
け本番出たとこ勝負だ、又運良くったってビジネスがいっぺぇの時きゃあエコノミーに空きが有る訳
きゃあねぇが、空きが有りゃあしめたもんだ、それに変更は出来る、まっ、そりゃあ下手な何んとか
休むに何んとかってぇもんだ、

今なら『空席情報』なんてのも簡単に手にへぇるが、なんしろ25年以上めぇの話だ、ネットどころか
パソコンだってやっとこさっとこの時代だぁな、この時間じゃあたった一つの連絡手段の電話も使え
ねえ。 “着いたぞ、カッツアン、起きろよ”って声で外を見るともう成田だ、ゆんべ寝てなかったから
なあ、さあ勝負だ。リミちゃんの荷物の多さは半端じゃあねぇ、ゴリラ2頭分は有ったねぇ。

それに比べて俺っちぁ小さいボストンバッグ1個、福島へチョイト行って来んのに大そうな荷物は
不釣合いってもんだ、あっちへ着いたらバクラーランでも行って調達するつもりだ、バクラーランって
のは市場みてえなもんと思ってくんねぇ、走り出しながら俺っちは“悪りいけど先にカウンターに行っ
てるわ”、鰯の頭も信心か、ってな事を思いながら神様、仏様、大仏様、観音様、ええとほかんねぇ
かな・・・。

カウンターはもう蜂んの巣突っついたさぁぎだ、がこっつらそんな事ぁ言っちゃあいらんねぇ、
チョイト聞くだけだから、ハイゴメンナサイヨって横っぱ入りだ、いつもの俺だったらそんな野朗が
居てみねぇ、絶てえ許さねえのによ、人間てなぁつくづく自分勝手に出来てやがらぁ、なあヨッチャン
よぉ。」 「そんな事感心してどうすんでぇ、それからどうしたい?。」
 


「チケットを見せて満員か?って聞くと、おネエチャンがコンピューターでカチャカチャカチャ、
“お客様いっぱいですねえ“って事たぁ満員なのか? ”いっぺぇも、満員も同じなのに何を聞いて
やがる、”って顔してるネーチャンがなぜか急に憎たらしくなって来ゃがった、 “キャンセル待ちは?
”って聞くと“出来ますよ”何すっとぼけたこと言ってやんでぃべらぼうめ、こっつら素人じゃあねぇや、
“違うんだ、何人待ってるか聞きてぇんだ”、又カチャカチャカチャ、”25人お待ちで御座います“。

だってよぉ、よおっ、どうするヨッチャン?。」

記 1999年5月